十五夜とは、月が新月(太陽と同じ方向に月があるため重なって見えない状態)から15日くらいで満月になることから、こう呼ばれます。また、今の季節は空が一番澄んでいてきれいに月が見えるので、中秋の名月とも呼ばれます。
そして昔から人々はこの十五夜の日に秋の実りを祝ってきました。一般的に、十五夜は旧暦の8月15日とされていますが、新暦と旧暦では「ずれ」があるため、毎年変わってきます。
今年の十五夜は、「10月4日」です。しかし実際の満月は、10月6日。というのも新月から満月までは約15日(細かくいうと14日~16日)なので、多少ずれてしまうのです。9月の初めに十五夜となることもありますから、年によって1カ月くらいの幅があることになります。
さて十五夜には、お月見団子や秋の野菜や果物、そして花を飾って祝います。
今回は、十五夜に飾る花をご紹介。どうぞ参考にしてください。
まず何といっても、お月見に欠かせないのはススキ。ススキが神様の依り代といわれているからですね。秋の七草である萩(ハギ)、桔梗(キキョウ)、葛(クズ)、藤袴(フジバカマ)、女郎花(オミナエシ)、尾花(オバナとはススキのこと)、撫子(ナデシコ)、全てを飾れればよいのですが、あまり現実的ではありません。昔は野に生えているものが簡単に手に入ったのでしょうが、今は難しい状況ですものね。
特に、萩や葛は切り花としてあまり流通していませんし、水揚げも難しいです。
しかしながら、品種改良を重ね、見た目が劇的に変化している花も多いなか、昔から変わらない秋の七草は、見た目の変化は大きくありませんから、これらを飾ることで、昔の人の気持ちに近づけるような気もします。
お月見にぴったりのピンポンマム(丸い形のキク)も、十五夜の前にはいつもに比べ価格が2倍くらいに上がってしまうことが増えてきました。年に一度の行事に合わせて花を育てるのは非常に難しく、生産者さんも高齢化に伴い引退される方が増えていますから、無理もありませんね。
また、地球環境が植物を育てるのに厳しい局面を迎えている気がします。しかし、あれがない! これもない! と嘆いていても始まりません。
十五夜だから絶対にこれを飾らなければいけないと考えるのではなく、臨機応変に花選びができるとよいですね。
私のお勧めは、秋らしさを演出するワレモコウやリンドウ、シュウメイギクなど。今年の十五夜には、花飾りとしてマリーゴールドを月に見立てようと思っています。また、しきたりにこだわらず、お月さまをイメージした黄色い花を集めて飾るとか、夜空の雰囲気の青い花を入れてみるとか、工夫して、皆さんなりのお月見花を作って楽しんでくださいね。時代がどんどん変化している今でも昔と変わらない花をみて、何か感じ取ってもらえたらうれしいです。
何度かこのコラムでも季節の行事について書いてきましたが、十五夜の他にも、イースターなど月の満ち欠けによって日が変動する行事も多く、人類と月は密接に関わりがあることがわかりますね。
(高橋植物園 高橋さやか)
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