植物園業界に身を置いてはや17年。「17歳」であれば初々しい青春時代だが、17年目ともなると社会人としては中堅層である。ここまでくると植物に関してはなんでも知っていると思われがちだが、滅相もない。まだまだ勉強足らずで知らないことだらけである。最近調べて「え? そうだったのか!」と無知を恥じたのが、ジュズダマとハトムギの違い。実は今まで同じものだと思っていたのだが、この2つの植物、草姿がとてもよく似ているけれど違う植物で、もちろん学名も違った……。思い込みとは恐ろしいものだ。
ジュズダマというと日本の伝統的な遊びのお手玉の中身である。他にも種子の粒の中心が筒状に抜けるので、ビーズとして糸を通してブレスレットやネックレスを作る遊びにも使われる。シャラシャラと柔らかい肌当たりだがそうそう簡単には潰れない固い種子で玩具に多用されるのも納得である。中国の新石器時代の遺跡からはジュズダマを原料の一つとしたビール醸造の痕跡が残されているらしく人類との関りが長い植物だ。
いっぽうのハトムギは、某お茶のCMソングで名前を耳にした方も少なくないのではなかろうか。ハトムギ茶単体でも癖のない味わいで気軽に飲めるお茶だ。漢方や民間療法では皮を剥いた種子が薬用に用いられる。雑穀として主食に混ぜたり、シリアル食品になることもある。さらに抽出されたエキスは基礎化粧品にと大活躍だ。ジュズダマとの大きな違いは、爪で潰すと割れる程の固さだということ。
ジュズダマもハトムギも原産地は中国から熱帯アジアにかけてで温暖な気候を好む植物だ。春に種子をまくと夏の間に生長して秋には収穫できる。ただしジュズダマとハトムギを近くで栽培すると交雑しやすいのでどちらかのみで育てるのをおすすめしたい。百聞は一見に如かずとはこれまさに。実際に触れてみることで新しく何かに気づいたり、違いを感じたりするものだ。私も違いの分かる大人になりたいがまだまだ道のりは遠い。
(水戸市植物公園 宮内元子)