「箱根湿生花園」は、湿原や川、湖沼など水湿地に生育している約1,700種類の草木花を集めた植物園です。春、夏には、ミズバショウやカタクリをはじめとする可憐な花々が美しい「箱根湿生花園」ですが、実は秋にも、銀色の穂が揺れるススキや紅葉したカエデなどが楽しめると、多くの植物ファンが訪れるそうです。
園内を知り尽くしたガイドさんによる園内散歩に参加する
箱根山の伏流水を引き入れた広い植物園には、木道の園路が整備され、低地から高山へと植物を見て回ることができます。草木花には、説明プレートも付いているので、自分のペースで楽しむこともできますが、おすすめは、1日2回の専属ガイドさんによる園内散歩。約90分かけて、湿地に育つさまざまな植物の名前や特色などを説明しながら歩きます。
「無料で箱根に詳しいガイドさんの話を聞ける」ということで、私も他のお客さまに混じって「園内散歩」に参加させていただくことにしました。この日のガイドさんは、若林宏光さん。この道12年というベテランガイドさんの案内で、「園内散歩」がスタートします。
花が終わった後の楽しみは、赤、黄色、紫の木の実
春、夏に比べると、花の数は減りますが、花が終わったあとの、赤、黄色、紫など、さまざまな実が色づいています。
「ガマズミ」の赤い実を見た参加者から、「この実は食べられますか?」という質問。「食べられますが、非常に酸っぱいですよ」と、若林さんがガマズミの実を手のひらに乗せてくれました。食べてみると確かに酸っぱい!? 若林さんは、この季節になると山で穫ってきたガマズミの実を焼酎に漬けているそうです。「真っ赤なリキュールができあがりますから、割りものにするときれいな赤いお酒が楽しめますよ」。
他にも、ノイバラやカマツカ、ツリバナなども、赤い実を付けていますが、見比べてみると、同じ赤い実でも、形や付く場所は異なり、それぞれに個性があります。
紫の実は、「ノブドウ」と「コムラサキ」です。園芸店で庭木として売られている「ムラサキシキブ」は、この「コムラサキ」のことだそうです。
秋に咲く花を観察する
花の種類は減ったとはいえ、「ダイモンジソウ」「リンドウ」「オミナエシ」「サラシナショウマ」「エンシュウハグマ」など、園内のあちらこちらに秋の花が咲いています。ガイドの若林さんは、花の生態、特徴、名前の由来などをひとつずつわかりやすく説明してくれます。
美しい仙石原の湿原の草木花を守るために
そして、箱根の秋の風物詩「ススキ」が広がるのは、木の柵で囲まれた「仙石原湿原植生復元区」。ときには人の手を加えて、美しい仙石原の湿原の植物を守っています。
例えば、湿原に生息するヨシは、ときに2、3メートルにまで成長し、他の植物から日を遮ってしまいます。そうなっては、湿原の他の貴重な植物の生育に影響を与えてしまうため、定期的にスタッフが鎌でヨシを刈っているそうです。
春を迎えるための冬季休業
「箱根湿生花園」は、紅葉が終わりを告げる、12月1日から3月19日まで、冬季休業となります。その間に、「ミズバショウ」が翌年もきれいに咲くようにと冬を越す準備を行ったり、木道を整備したり、大きくなり過ぎた木を切ったり、職員総出で春に向けた作業を行っているそうです。
本来、「ミズバショウ」は、寒い場所に自生する植物で、雪に根が埋もれた状態で年を越しています。そして春になって雪が解けると、芽を出て花が咲きます。箱根が寒いとはいえ、根雪になるほどの雪は降りませんから、北国と同じ状態を作るために、休業になると同時に、職員総出で、園内の「ミズバショウ」に落ち葉を被せます。そして3月20日の開園前に、落ち葉を取り去り、今度は雪解けの状態を作ってあげるのです。「箱根湿生花園」の水芭蕉は、2万株に及びますから、職員の方のご苦労を考えると、頭が下がる思いです。
「90分も!?」と思いながら参加した園内散歩。終わってみればあっという間で、なんだか物足りない気分です。次の季節には「園内散歩」でガイドさんの説明を受けた後に、同じルートをもう1周してみたいなと思います。
「箱根湿生花園」の紅葉は、11月中旬をピークに見頃を迎えます。園内では、カエデウォッチングも実施されるとのことですから、ガイドさんの説明を聞きながら、草木花を通じて、秋を感じてみてはいかがですか。
ー「草木花 × 箱根」〜箱根随一の美しい紅葉を愛でる 「箱根美術館」もご覧ください ー
取材協力:箱根湿生花園、箱根プロモーションフォーラム
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