あなたは区別できますか?
庭や道端で、ごくふつうに見ることができるザッソウのカタバミ。しかし、「カタバミをクローバー(シロツメクサ)だと勘違いしていた」という方は存外におられるようです。同じようなことが書かれているザッソウ関連の本もちらほらと見受けられますので「あるある」なのかもしれません。
ではなぜ、カタバミとシロツメクサを間違えてしまうのでしょうか? カタバミはカタバミ科、クローバーはマメ科なので分類上でも異なる植物です。三つ葉で這うように茂る草姿がそっくりなので、見た目上は確かにややこしいです。
クローバーというと葉っぱがハート型の「四つ葉のクローバー」的なマークをいろいろなところで見かけます。これもクローバーとカタバミを間違えてしまう原因のひとつかもしれません。
ハート型、かわいいですよね。そのどこがいけないのでしょう? ただ、クローバーの葉っぱ、それは正しくはハート型ではありません。実際に見てみましょう。ありふれた三つ葉のクローバーです。葉の先端が少しへこんでいますが、基本的に丸っこい形をしています。
カタバミの葉っぱも見てみましょう。こちらの葉っぱは明確なハート型です。
ですから、道端でカタバミを見て「イラストとかでよく見るハート型の葉っぱだ、これはクローバーだな」となるのではないでしょうか。
ちなみに(電車の)グリーン車のマークは「四つ葉のクローバー」を模したものなのですが、ハート型ではありません。実物のクローバーに近いということでしょうか。
カタバミとクローバーを区別をするには、実際に観察するのが手っ取り早いです。幸いどちらも日本全国で見ることができます。カタバミは歩道の隅っこや花壇、クローバーは公園の芝生のなかや河原に生えていることが多いです。
一番わかりやすい違いは花の形です。見た目が全然違いますので、どちらかの花を憶えてしまえば(開花時期に限り、ですが)消去法でカタバミとクローバーを判別することができます。花がよく見られる時期はカタバミが春~初夏、クローバーは春~夏です。
葉っぱの違いは前述しましたように、カタバミがハート型でクローバーは丸っこいです。さらにクローバーの葉っぱは表面に白いV字型の模様が入ることが多いので、筆者はまずそこで区別しています(模様が入らないこともままあります)。
つぎに、近所で見つけたカタバミの仲間(カタバミ科カタバミ属)を紹介します。
アカカタバミ
葉が赤いタイプのカタバミです。ふつうのカタバミと区別してアカカタバミと呼ばれます。分類上もふつうのカタバミとは異なるものとして扱われています。花はカタバミと変わらない黄色ですが、中心部分に赤い輪が入ることが多いです。
ムラサキカタバミ
南アメリカ原産で、観賞用として江戸時代に入ってきました。地下に鱗茎(「りんけい」、球根の一種)をもちます。ムラサキと名前が付いていますが、花色は淡いピンクにも見えます。
イモカタバミ
南アメリカ原産で観賞用として渡来し、各地で野生化しています。株元に小さなイモ状の塊茎(「こんけい」、球根の一種)ができます。ムラサキカタバミと似ていますが、花の中心が濃い紫色になることや、雄しべの先端が黄色くなることなどで見分けが付きます。
オッタチカタバミ
北アメリカ原産。茎が立ち上がって伸びるのが特徴です。最初に見たときは日陰で間延びしたカタバミなのかと思ってしまいました。
こうやって見てみると外来種が多いですね。カタバミの仲間は世界中におよそ800種が分布するといわれています。園芸では「オキザリス」と呼ばれることが多く、様々な種類が栽培されています。
カタバミとクローバーの話から、かなりカタバミ方面に偏ってしまいました。それでは最後に身近で見ることができるクローバーの仲間(マメ科シャジクソウ属)を紹介します。
コメツブツメクサ
小さな黄色い花がまとまって咲きます。道端や芝生のなかなどでよく見かけ、最盛期は一面を覆うぐらい旺盛に繁茂します。
ムラサキツメクサ
ヨーロッパ原産、花の姿はクローバー(シロツメクサ)の紫色といった感じですが、別種です。茎は直立して50cmくらいの高さになります。
クローバーとカタバミ、いかがだったでしょうか? みなさんも、あらためて両者の違いを確認してみてくださいね。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)