今回は、亜高山帯の針葉樹林内に群生する「コミヤマカタバミ」を紹介します。カタバミ科カタバミ属の多年草で、小さいことからこの和名を持っています。漢字で“小深山片喰”と書きます。沖縄を除く日本全国に分布します。南限は屋久島といわれています。
カタバミといえばムラサキカタバミやハナカタバミなどを身近で見かけます。ムラサキカタバミは南アメリカ原産で江戸時代末期に観賞用として入ってきたもので、長い年月を経て野生化した帰化植物といわれています。ハナカタバミはふつうに栽培されていますが、ときどき野生化したものもあります。これは南アフリカ原産で、同じく江戸時代末期に日本に入ってきたとされています。
写真は山梨県にある日本百名山の金峰山で撮ったものですが、ほかにも6月の北海道の利尻岳や東北の鳥海山などでも出合っています。花期は7~8月とされていますが、地球温暖化の影響なのか山梨県内の2000m級の山々でも6月からコミヤマカタバミの花を見ることができます。自生場所は、山梨県内でも同様ですが、冬季の積雪量が多いと思われる針葉樹林帯のなかという共通点があるようです。雪が溶けて間もない枯れ枝や苔などの隙間からまず一輪の葉が出てきて花を咲かせます。その後、葉がそして花が次々と姿を現して約1週間後には群生が形取られていきます。
個人的には葉・茎・花の触覚に興味がありますが、微かな香りを楽しむだけにしています。小さく柔らかそうな可愛い野草なので、じかに触れることは避けることにしています。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))