サクラの花もあっという間に終わり、もう初夏の陽気ですね。ゴールデンウィークが過ぎ、気温も安定してきたので、トマト、キュウリ、ナスなどの夏野菜の苗を畑やプランターに植える季節になりました。ヒマワリ、アサガオなどの夏の花の種まきも今の季節がおすすめです。
今の季節、日当たりのよい芝生などで見つけるととてもうれしくなる植物があります。ネジバナです。すーっと伸びた茎の先端にらせん状に桃色の花が横向きについた姿は、名前通りネジネジしていて、小さな小さな螺旋階段です。この階段を昇るとどこにたどり着くんだろう? はっ! もしかして天使? 天使が使うのね! などとファンタジーなことを考えつつ、自然の造形美にうっとり見惚れてしまいます。
あまりにも素朴な姿なので、この花だけを愛でる方は少ないかもしれませんが、実はこの花はラン科の植物なのです。ランと聞くと、開店祝いにずらっと並んだコチョウランや熱帯のジャングルの奥で艶やかに咲き誇るカトレアなど華やかな花を想像する方も多いと思いますが、熱帯や亜熱帯のラン以外にもラン科の植物はあり、日本にも自生します。その一つがネジバナなのです。Twitter上では桜前線ならぬネジバナリレーで開花を共有し合い日本での分布を把握するアカウントも存在します。
ネジバナの魅力の一つに「思い通りに栽培するのがとても難しい」ことが挙げられます。ラン科の植物は土中の菌と共存することによって生存競争を勝ち抜いてきたのですが、ネジバナの根も菌根:菌類が根に入って共生できる根になっています。しかし同棲というのは、どの種族にとっても「気の合う同士」だからこそ成り立つもので、ネジバナもそれまで元気だった株を植え替えるだけで、枯れてしまうことが多いのです。これは土中の菌類が攪乱されてバランスを崩してしまうからです。芝生で毎年出てくる株を掘り上げて、庭に移植しても上手く定着しないことが多いのはこのためです。
手元に置いて楽しみたいなと思っても、ままならぬ花。ますます可愛さがこみ上げてきます。どこかで見かけたら、「その場所で頑張れよ」とそっと見守ってやってください。