[ヌマスギ]霜除に落ち葉のお布団|ヒノキ科ヌマスギ属|エバーグリーン

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今年の紅葉は楽しまれましたか? 北関東は日中と朝晩の寒暖差が大きいために今まで私が目にしてきた都心や関西、中国地方の紅葉よりも色がはっきりしている気がしています。みなさんのお住まいの地域はどうだったでしょうか。青葉で日差しを遮り、紅葉で目を楽しませてくれた樹々の葉たちもそろそろお役目を終えて土に還るべくどんどん落葉しています。

私が勤務する植物園では静かな園内で延々と葉の落ちながら枝やほかの葉に当たったり地面に落ちるパラパラという音が聞こえ、朝出勤してみると園路が落ち葉で埋もれて見えなくなっていることすらあります。こんなにたくさんの葉がついていたのかと驚かされますし、来年にはまたこれだけの量の葉が芽吹くのかと考えると植物の生命力の強さに感心します。

名前のとおり鳥の羽のような葉っぱ

名前のとおり鳥の羽のような葉っぱ

 

水戸の植物園で園内を彩る紅葉の代表がラクウショウです。ラクウショウは漢字では落ちる羽の松(落羽松)と書き、葉が小枝についたまま鳥の抜け落ちた羽のような形で落ちることから名付けられました。和名はヌマスギといいますが、湿地や沼地で高木になる樹木だからです。水の多い場所に生えるため、根が土中から盛り上がって鍾乳洞か氷柱のような出っ張りが現れます。この根は気根といい地上で呼吸する役割を担っています。

苗と苗の間を埋めるように葉を敷き詰める

苗と苗の間を埋めるように葉を敷き詰める

 

植物公園では毎年落葉のシーズンになると、清掃スタッフさんの手を借りて園内に植栽展示されているラクウショウの葉が落ちたものを大量に集めます。この落ち葉を冬から春の花壇のパンジービオラハボタンなどを植えつけた土の上にマットのように敷き詰めるのです。

茨城県水戸は北関東なので冬場は霜がおり年によっては2〜3回積雪もあります。寒さに強い植物を植えているとはいうものの、3〜5センチ位は立つ霜柱に毎晩のように根を持ち上げられては植物も耐えられません。ラクウショウの葉は霜が降りるのを和らげる地面のお布団の役割をしてくれます。メタセコイアのように小さい米粒大の葉がポロポロ落ちないのに、細かい切れ込みのある葉の形や枝ぶりで植物と植物の間に収まりがよく、敷き詰めた時に見た目が良いのが特徴です。

水戸市植物公園のラクウショウの森

水戸市植物公園のラクウショウの森

 

日本庭園では庭師さんが同じように落ちた松葉を集めておいて、庭に敷き詰めて冬景色を演出することがありますが、これも霜除や水が飛び跳ねた時の汚れ隠しです。農家さんが藁を育てている野菜の周りに敷くこともありますがこれも同様です。お庭で藁を敷くならば長いままではなく10センチ程度に切って使うとよいでしょう。

ただし春が訪れた時にはこれらの葉は土にすき込むことはせず取り除くほうがよいでしょう。葉が土の中で分解されるのには一定の時間が必要で、また次にすぐに夏の花壇の植物や野菜を植えるのに適した土にはなりません。身近にある落ち葉ならなんでも良いというわけではなく、例えばイチョウはたくさん葉が落ちるし綺麗だから使いたくなりますが、葉と葉がぴったりくっついてシートになってしまいやすいので植物に水やりしても土までしっかり水が届いていなくなることもありますので敷き葉には向いていませんのでお気をつけて。

 

水戸市植物公園 宮内元子)


水戸市植物公園のラクウショウの森