今回は、山野でふつうに見ることができる「アケビ」を紹介します。アケビ科アケビ属の落葉つる性木本で、本州・四国・九州の丘陵帯から山地帯の日当たりのよい山野などに自生しています。
写真は、すべて山梨市内の里山で撮りました。森林セラピーのお客さんが「アケビ」の実を見つけたことがきっかけとなり、そのセラピーロード以外のあちこちでも自生していることがわかりました。その後、我が家から近い散歩道や近辺の低い山々でも、目に留まるようになりました。
花期は4〜5月です。最初に出合ったのが山梨市内の森林セラピー巨峰の丘ロード沿いで、上の写真のようにあまり目立たない雄花だったので、しばらくはその存在に気付かなかったほどです。一方、濃い紫を帯びたピンク色の雌花はよく目立ち、直ぐにわかりました。これら二か所の里山は直線距離で約6kmほど離れていますが、地形や土壌が異なることから雄花の紫色にも違いがあるように思えます。
果期は9〜10月です。お客さんが見つけてくれた実を採り試食をおすすめすると、「生で食べられますか?」と聞かれたので、まず私が食べて見せました。試食後の感想は、「想像以上に甘くておいしかった。初めて経験で、何か得をした感じ。淡い甘い香りが新鮮だった」でした。
アケビの仲間に「ミツバアケビ」があります。アケビとミツバアケビの違いは、葉と花です。葉は、アケビが5枚の長楕円形で、ミツバアケビは名前のとおり3枚で卵形ないし倒卵形です。花は、色合いと雄花の大きさと形です。写真でも明らかなように、ミツバアケビは濃紫色というよりもチョコレ―ト色をしており、英語名の“chocolate vine”のほうが相応しいと思います。数が多く小さい雄花がミツバアケビの特徴といえます。ミツバアケビは、アケビの生息地に混在することも多いですが、北海道などの寒い地域にも分布しています。
アケビは古くからさまざまな形で利用されており、熱冷ましなどの民間薬として使われるほか、果実はもちろん新芽なども山菜として食べられています。また、成熟した蔓は籠などを編む工芸品に用いられます。
森林セラピーにとって利用価値の高い樹がアケビです。視覚以外にも、花や果実の淡い香り(嗅覚)、無毛の蔓などの手触り(触覚)、甘い果実(味覚)が季節を通して愉しめます。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))