今年(2018年)は東京でも雪がしっかり降りました。街角には溶けきらずに氷になった雪がしばらく残っていました。花壇に植えた花たちが寒さでいたまないかと気にかかる毎日ですが、そんな日々の中でフキノトウが土や雪を押し上げて瑞々しい緑色の顔を出したのを発見すると、春の訪れを身近に感じます。
春の味覚の代表の一つでもあるフキノトウはある植物の新芽です。柔らかいうちに食べてしまわず、一部収穫せずに残しておくと生長して花も咲かせます。さて、なんという植物でしょう?
そもそもフキノトウはフキ(蕗)の蕾(つぼみ:花芽)です。
フキはキク科の植物で花は白い集合花。そのまま放置するとタンポポのような小さな綿毛ができて風にのって拡散します。寒い時期に雪を割って蕾が出るということは、葉よりも花が先に出て伸びるということです。葉は花の後に茎を伸ばして初夏に大きく葉を広げます。太い塊の根が地表に出ると緑色のワサビのように見えますが、有毒ですから口にしないよう注意しましょう。
数少ない日本原産の野菜として平安時代から食用にされてきたといわれています。市場に出回るのは栽培品種が多く、2mにもなるアキタブキや愛知早生(あいちわせ)、水フキなどのほかに、野生種を含めると200種近くあるとされています。北海道でアイヌの伝承に登場する小人・コロポックルはフキの大きな葉っぱで屋根をふいた家に住んでいるとか。この大きな葉のフキは北海道の螺湾(らわん)川に沿って自生するラワンブキというアキタブキの一種です。
フキは開花後に地下茎を通じて繋がっている葉芽(はめ)がのびて大きな葉を開きます。この葉の茎(葉柄)も食用になります。フキノトウは蕾のままで採取されたあとなんの処理せずにそのまま天ぷらや煮物にして食用にされますが、茎の部分は重曹や木の灰などで煮て灰汁(あく)を抜くか塩漬けにしてから調理します。
庭の花壇の緑の中でも、地際(じぎわ)から青々とした丸い葉が重なって出ていてアクセントになります。開花期が限られている花で花壇をデザインするよりも、長く観賞でき葉の色や形でデザインすると変化に富んだ庭を楽しむことができます。日本の四季を堪能できる植物として「食べて良し、見て良し!」のフキを植えてみませんか。
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