今回は、本州のある限られた地域だけに生息する「ヒメマツハダ」を紹介します。マツ科トウヒ属の常緑針葉高木で、本州長野県の八ヶ岳西部から南アルプスの西部の山地帯上部に自生します。
涼しくて乾燥した地を好む大陸系の樹木で、氷河期終期には日本各地で生えていたものと推測されていますが、現在の自生場所は長野県のごく一部の狭い地域に限られており、その数も約1,000本程度と推定されている希少な樹木です。勿論、絶滅危惧種に指定されています。
写真はすべて、山梨市にあるフルーツパークで撮ったものです。フルーツパーク開設時に植樹された樹木の一つで、落葉時期には遠くからでも目を惹く格好の目印になります。樹高30〜35m、幹径80〜100cmに達するそうですが、この2本の樹は約18m、40cmです。樹皮は写真01や05でわかるように暗灰色で、薄い鱗片状に剥がれます。毬果(きゅうか)は円筒形で、長さ8〜12cm、径2.5〜4cmになり先は細いです。
筆者がフルーツパークを散歩するときには、必ずこの樹の下を通ります。穏やかな気持ちにさせてくれるからです。森林セラピーでは、針葉樹の香りが自律神経のバランスを整えてくれる効果が期待できるとされていますので、自ら実証・再確認しています。春は香り成分が強くなる時期なので、傍まで来ると針葉樹らしい香りが漂ってきます。夏は香りも嗅ぎますがこの木陰の芝生で休むと最高に癒されます。秋は幹の温もりと香りをハグして確かめます。冬は樹脂の香りと葉の手触りが和ませてくれます。ほかにもありますが。
地球温暖化による異常気象が頻繁に発生し、その防止対策の急務が叫ばれてはいますが、実際には遅々として進んでいないのが現状です。自然環境の破壊が危惧され、動植物の絶滅危惧も進んでいるようで、心苦しいかぎりです。森林セラピーに携わる筆者としては、よりいっそう、豊かな自然・森林の維持に微力ながら努力して行きたいと考えています。
このヒメマツハダは絶滅危惧種に指定されていますが、数は少ないもののいくつかの公園や植物園などでも植えられておりそこでも見る機会があると思われますので、その際は氷河期をも生き延びたこの樹に思いを馳せ、香りや手触りなどを確かめてはいかがでしょうか?
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))