今回は、山野の日当たりのよい草原などで見られる「アマドコロ」を紹介します。キジカクシ科アマドコロ属の多年草で、沖縄を除く日本全国に分布します。古くから食用や薬用として利用されてきました。漢字で「甘野老」と書きます。
写真はすべて、乙女湖ロードおよびその周辺で撮りました。比較的大きな葉の下に白色の花が垂れ下がるようにつくので見落としがちですが、ゆったり散策すれば見つけられるでしょう。花の時期は4〜6月といわれていますが、ここは1,500m超の高地なので6月に入ってからが見頃になります。
上の写真のように、白い筒状で先端が緑色を帯びている可憐な花です。この花も食用ですが、山菜としては甘みのある春の若芽や根茎がよく知られています。根茎は特に薬用として重宝されていました。滋養強壮や消炎など、昔から民間薬として用いられています。
森林セラピーでは、主に触覚を刺激するために葉や茎などに触れてもらいます。葉の表裏は見た目だけでなく手触りがまったく異なります。茎は角張っており、独特の感触がおもしろいです。リピーターの方には、果実にも触れてもらうことがあります。直径が約1cmの球形をしており、山野草の中では大きな方です。7月中旬頃までに成長しますが、濃い緑色(写真05)から、徐々に黒く熟して柔らかくなってきます(写真06はうっすら黒くなりかけのものです)。
10月中旬頃には果実はほとんどなくなってしまいます。地面にも果実や種などの形跡がないので、野鳥などに啄(ついば)まれたか持ち去られたのでしょう。和名の謂れは、根茎がヤマノイモ科のトコロに似て甘いからといわれています。森林セラピーとしては、初夏から秋まで比較的利用機会の多い山野草の一つです。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))