はじめに
洋ランというと、カトレアやコチョウラン(胡蝶蘭:ファレノプシス)のように鮮やかな大輪の花を連想する方も多いかもしれません。今回紹介するデンドロキラムは、全体的に控えめでおとなしい姿の洋ランです。
こんなランです
東南アジア、インドネシア、フィリピン、ニューギニアにいたる広い範囲におよそ100種~150種が分布します。多くは樹上や岩の表面に根を張り付かせる着生種で、地面に根を下ろす地生種も一部見られます。
デンドロキラムは「デンドロン(木)」と「ケイロス(唇弁)」の2語からなります。樹上に根を張り、唇弁(花の一部)が目立つことに由来します。
地際が丸くふくらんでバルブ(偽球形)となり、その先端に1枚の葉を付けるタイプと、明確なバルブを持たず、細長い葉がまっすぐ伸びるタイプがあります。
バルブを持たないタイプの葉は、松葉のようにしっかりと太いものから、糸のように細いものまであります。
小さな花がたくさん咲く
花色は白や黄緑色、淡い黄色のほか、オレンジ色、赤色などがあり、芳香を放つものが多いです。開花期は主に冬から初夏です。細長い花茎に2列に並んで咲きます。花の並び方は左右に整列して咲くもの、二重らせんを描くように咲くものなどがあります。
花茎が長く伸びて垂れ下がる姿は優雅で、長いものでは30cm~50cmになります。大株に生長すると何本もの花茎を出し、花どきは見事です。ちょっと見上げるような位置に鉢を置いて鑑賞するのがおすすめです。
一輪ずつは小さいですが、じっくり見ると細かい造形が美しい花です。
育て方
ポイントは置き場所と水やりです。強い日射しは苦手で、特に夏の直射日光は葉が傷んで株が弱ります。春から夏は屋外の風通しが良い明るめの日陰で育てます。冬は室内の日当たりの良い場所に置きます。7℃~8℃をキープできれば寒さによるダメージも受けません。
春から秋の生育期は、乾いてきたらたっぷりと水を与えます。冬は乾かし気味にしますが、花芽の伸びている株は極端に乾かさないよう気をつけます。
肥料は春に固形肥料を1回施し、あわせて液体肥料を月1~2回、秋まで与えます。肥料が多いと花芽を出さないことがあるので秋以降は加減します。
鉢から株がはみ出すようなら一回り大きな鉢に植え替えるか株分けします。植え替え時期は春で、水ゴケを用います。
さいごに
デンドロキラムはラン展の展示即売などでも見かけます。育てることも花を咲かせることもさほど難しくないので、興味のある方はぜひ挑戦してください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
- 前の記事を読む(食べて良し、見て良しのフキノトウは何の芽?)
- 次の記事を読む(「草木花 × 日本最大級の温室」〜 咲くやこの花館館長 久山敦さん)