今回は、春によく見られる「イチリンソウ」を紹介します。落葉広葉樹林の林縁や林床に生えるキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、直射日光の少ない小川の傍などでよく見かけます。初夏に枯れてしまうのはニリンソウと同様で、春植物といわれています。国内では本州から九州の暖帯上部~温帯に分布します(ニリンソウは北海道にも分布)。
山梨県内では茅ヶ岳(かやがたけ)などを含め数多くの山の比較的低い登山道沿いで見かけますが、数は少ない印象です。写真は山梨市内の里山の小川の傍で、4月下旬に撮ったものですが、ほかの地域や山ではこれほどの群生に出合ったことはありません。
下の写真で一緒に写っている小さな白い花はニリンソウです。この場所ではまずニリンソウが咲き
出し、1〜2週間後にイチリンソウが続くのが毎年変わらないパターンです。
イチリンソウの花の大きさは、ニリンソウよりも直径で2倍くらいの面積で4〜5倍程度あります(写真ではもっと差があるように見えますが……)。この花も蕾の状態では頭を垂れていますが、花の開き出しに併せて上へと向きを変えていきます(開花中の写真参照)。そして開ききると最後のの写真のようにほぼ真上を向きます。蕾が割れ始めてから花が開ききるまでの時間は2〜3時間程度でした。
両者の葉の形は似ていますが、群生の写真を観察するとその違いがよくわかります。花の香りはニリンソウ同様、微かな甘い香りがします。蜂や小さな虫が蜜を吸いにやって来ますので、納得です。毒性があるので誤食しないように注意しましょう!
ニリンソウは煮沸して料理することもあるようですが、私は食べた経験はありません。イチリンソウは大きい分だけニリンソウよりも毒性が強いといわれていますので、さすがに食用にはしないようです。キンポウゲ科のほかの属には更に毒性の高いフクジュソウやヤマトリカブトなどがあります。特にヤマトリカブトの葉っぱはイチリンソウやニリンソウ、サンリンソウの葉に似ていますので、くれぐれも間違わないようにしましょう!
ニリンソウとサンリンソウについては、以前に掲載したニリンソウの稿でも少し触れていますのでご参照いただければと思います。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト 四十物 治夫)
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))