春になると一回は見たくなるザッソウ、それがキランソウです。花の時期が来ると(3月~4月)、近所を散歩しながら公園の木陰や道端など、生えていそうな場所につい目がいきます。茎は立ち上がらず、地面に張り付くように四方へ伸びていきます。葉っぱは濃緑色でツヤがあります。
シソ科によく見られる特長として茎の断面が『四角い』ことがあげられますが、キランソウはシソ科でありながら茎の断面は『丸い』です。地味ですがおさえておきたいポイントです。花は目の覚めるような鮮やかな紫色で、ザッソウにしておくのはもったいない(?)ほどです。毎年見たくなる理由は、この花の美しさ故です。
花の美しさとは裏腹に、「イシャゴロシ(医者殺し)」や「ジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)」といったなんとも物騒な別名があります。アロエやゲンノショウコにも「イシャイラズ」などの俗称がありますが、同じ意味です。
古くから薬草として利用され多くの効能があったところから、医者にかかる必要がないという意味でイシャゴロシの名前が付きました。解熱、下痢、咳、痰、虫さされ、腫れ物などに効くようです。
ジゴクノカマノフタのほうは明確な由来はわかりません。張り付くように生えている姿が地面に蓋をしているようだからとか、地獄の入口に蓋をして病人が通れないようにする、など諸説あります。後者は、薬として用いると重い病にかかった人も元気になるということなのでしょう。イシャゴロシと同じような意味です。
しかし、2つともインパクトのある別名で、正式和名のキランソウよりよほど記憶に残ります。特にジゴクノカマノフタ。教えると多くの方が一発でおぼえてくれそうです。
キランソウはシソ科アジュガ(キランソウ属)の一種で、学名はアジュガ デカンベンス(Ajuga decumbens)です。日本に自生する同属に、ジュウニヒトエ(Ajuga nipponensis)などがあります。園芸ではアジュガ レプタンス(セイヨウジュウニヒトエ)(Ajuga reptans)の変種や園芸品種が「アジュガ」の通称で出回ります。這うように広がる性質を活かして、グランドカバープランツ(地面を覆うために植えられる植物)に利用されることが多いです。
4月から5月にやや湿り気のある明るい日陰などで見ることができるので、探してみてくださいね。小ぶりな植物ですが、花色が鮮やかなので見つけやすいと思います。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)