[ランシンボク]古今東西 ご神木巡礼 番外編〜湯島聖堂のカイノキ|ウルシ科ランシンボク属|エバーグリーン

      [ランシンボク]古今東西 ご神木巡礼 番外編〜湯島聖堂のカイノキ|ウルシ科ランシンボク属|エバーグリーン はコメントを受け付けていません

まだまだ、感染症対策のため自由に外出できない日々。でも、ひとり街歩きやサイクリングならOKということなので、今回は東京名所の一つとしても知られる湯島聖堂のカイノキをご紹介します。

 

神社などでもときどき出あうカイノキってどんな木?

正式にはランシンボクと呼ばれるこの木は、牧野富太郎博士が命名した「孔子の木(クシノキ)」としても知られています。この名の由来は中国の山東省曲阜市にある、『論語』で知られる哲学者の孔子(紀元前551-前479年)の墓所に植えられていたことがその由来とされています。そのためか湯島聖堂でもこの木は孔子とは離すことができないものとして、世界最大の孔子像(4.57m)のすぐそばに見ることができます。

また、学問の木とも呼ばれていますが、これは中国で科挙と呼ばれる隋から清の時代の官僚登用試験の合格者には、この木で作った笏(こつ・しゃく)を与えて名誉を称えていたからだとされています。ちなみに笏とは、雛人形のお内裏様の多くが手にしている細い板のようなもので、日本でも平安貴族は正装時に手にしていたことが知られています。そのためこの木の葉は合格のおまじないにもされているのだそうです。

カイノキ

カイノキ

孔子の像

孔子の像

 

カイノキの漢字は、楷の木もしくは楷樹

さて、このカイノキ。漢字では、楷書の「楷」の文字が使われています。これは葉がきれいに対生で、枝の出方も整い楷書の特徴に似ているからなのだそうです。ほかには南蛮櫨(ナンバンハゼ)、トネリバハゼノキとも呼ばれています。台湾では老木になると幹が腐り空洞になる(芯が腐爛する)ことから「爛心木(ランシンボク)」、中国では秋に葉が美しい黄色に色づくことから「黄棟樹(おうれんじゅ)」や黄連、黄連茶、連木とも呼ばれています。また、この木は中国全土で見ることができますが、日本ではまだ珍しい木のひとつとされています。それはこの木が性来、雌雄異株で開花まで30年ほど年月がかかり、結実するのも難しいからなのだそうです。

 

最後に、湯島聖堂について

元禄3年(1690)に将軍・徳川綱吉が儒学を広げるために建てたもので、寛政9年(1797)幕府直轄学校として「昌平坂学問所(通称『昌平校』)」として開設されました。大正11年(1922)には国の史跡に指定されますが、翌12年(1923)関東大震災が起こり、入徳門と水屋を残し焼失。その後、昭和10年(1935)、昭和61年(1986)に再建、修理が行われました。また、ドラマや映画のロケ地として使われています。

湯島聖堂

湯島聖堂

 

敷地内には多くの美しい樹木が植えられ、都心であることを忘れてしまいそうな場所。また、11月23日には敷地内にある神農廟(しんのうびょう)が公開され神農祭が行われますので、ぜひまた訪ねてみたいものです。

 

エバーグリーン編集部オススメサイト

 

  • 『湯島聖堂』:東京都文京区湯島1-4-25

 

(グリーンアドバイザー、開運植物文様研究家 藤依里子)


 

カイノキ