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2021年3月23日

[ヒスイカズラ]碧色の宝石|マメ科ヒスイカズラ属|ヒスイカズラ

ヒスイカズラという植物の名を耳にしたことはありますか?

3月初旬になると全国の植物園から「ヒスイカズラの花芽を発見しました!」「開花予定は**日頃です」といった広報が続々とリリースされます。ヒスイカズラは植物園のなかでもスターの存在です。今年、渋谷区ふれあい植物センターのヒスイカズラは2月17日に花芽を発見し、3月3日に開花しました。植物センターの株はさぼり癖がひどく、前回開花したのが3年前だったので花芽を見つけたときには「やっと仕事をしてくれる気になったか」とスタッフ共々狂喜乱舞でした。

ヒスイカズラ(全貌)

ヒスイカズラ(全貌)

 

名前の由来は宝石から。ひと目見ると忘れられない碧色を翡翠にたとえて名づけられました。英語でもJade Vine:翡翠の蔓と呼ばれています。自生地はフィリピン諸島の熱帯雨林で、太く力強い蔓は20m以上になり、シャンデリアのような花房も時に150cmにもなります。

竜骨弁と呼ばれるバイキングの船のような形の花弁は、大変複雑な形に見えますが花粉を媒介するオオコウモリにとってはしがみ付きやすく好都合です。船と船を合わせた中央部分の奥に蜜がたっぷり貯えられていて、その蜜を飲もうとコウモリが花にしがみ付くと、下の花弁が下垂し先端から雄蕊と雌蕊が顔を出します。蜜に夢中のコウモリの体に雄蕊の花粉が擦り付けられて、また違うヒスイカズラの花へと運ばれていくのです。

ヒスイカズラの蕾が開花するまで

ヒスイカズラの蕾が開花するまで

 

残念なことに現在、自生地の野生のヒスイカズラは絶滅が危惧されています。ヒスイカズラの生きるフィリピンの熱帯雨林は森林から農耕地などへの転換、焼き畑、商業伐採などによって面積が激減し、その一方でアブラヤシやゴムの畑の面積が急激に増加しています。東南アジアにおける森林伐採の多くは有用林を選択的に伐採する方法が主流であるため、これが森林面積を減少させる直接の原因になることはほとんどありません。

しかし、伐採のための道路建設、それにともなう土壌流亡、巨木の欠損などにより本来熱帯林が持っている機能や森の形が少なからず劣化することが知られています。ヒスイカズラも森の劣化によって危機に晒されています。同じ地球に生きる生物の多様性を大切にしたいものですね。

お住いのお近くの植物園でもヒスイカズラが栽培されているかもしれません。機会があればぜひ一度足を運んでみてください。写真で見るよりも何倍も美しく不思議な碧色を、ぜひその目で見てください。

 

渋谷区ふれあい植物センター 宮内元子

ヒスイカズラ(全貌)