「イチゴノキ」と聞いてピンとくる方は、あまりいないかもしれません。植物園でたまに目につくことはありますが、庭木などではあまり見かけることはありません。「イチゴノキ」はツツジ科の常緑樹で、花は可愛らしく、果実のなり方も面白い樹木です。
イチゴのような赤い果実がなるので、この名前があります。実際の見た目はヤマモモの果実に近い感じがします。
花が咲くのは晩秋11月~12月頃です。小さなつぼ型で色は白、房状にたくさん咲きます。花姿は同じツツジ科のブルーベリーやドウダンツツジ、アセビ科のアセビにも似ています。
花後、ほぼ1年がかりで果実ができて熟します。大きさは直径1.5~2cmくらいです。表面はザラザラブツブツした質感です。熟すにつれて、緑から黄色そして赤色に変化していきます。あちらの実はもう真っ赤なのに、こちらはまだ黄色いというように、熟し具合にはばらつきがあります。一斉に赤く熟す木もあるのかもしれませんが、私は見たことがありません。
前述のように果実が熟すまでほぼ1年かかるので、花の咲く時期とかぶります。実が赤く色づいている横で白い花が咲いている様子はなかなかおもしろいと思います。今咲いている花が翌年の今頃には、横で色づいている果実のようになるのだなぁ、と感慨にふけってしまいます。
果実は一応食べることができます。果肉はオレンジ色でねっとりとしていてわずかに甘みがあります。細かいタネが入っているので、噛むと少しジャリっとします。特に風味は感じず「何を食べているのだろう?」という気持ちになります。ジャムや果実酒などにも加工できるそうです。
さいごに
実ができて熟すまで1年かかるイチゴノキ、いかがだったでしょうか。あまり見る機会は多くないかもしれませんが、憶えてくれるとうれしいです。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
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