謎めいた生態と艶やかな名前から多くの俗説があるゲッカビジン。
サボテン科クジャクサボテン属の植物です。インターネット上によくある「全ての株が1つの個体からのクローンである」「1年に1度しか咲かない」「新月の夜にしか咲かない」といったちょっとロマンチックな情報は全て間違いですから、鵜呑みにしないようにご注意くださいね。
確かに、過去には原産地から日本へ持ち込まれた株から繁殖されたために日本全国にあるゲッカビジンは全て同一個体でした。しかし現在は海外から別の株が持ち込まれたため、複数の個体のクローンが流通しています。また栽培場所と管理方法さえよければ年に3~4回開花することができます。
夜ひっそりと開き始め朝には萎んでしまう花は、最大で25cm程の花径があり見ごたえがあるうえに芳香を発します。これは花粉や蜜を食用とする小型のコウモリを引き寄せて花粉を媒介させるためだと考えられています。クジャクサボテンの仲間には、ピンク色や濃い赤色の花を咲かせるものがありますが、暗闇の中で目立つためには白色で大きい花の方が効果的なようです。
また、耐寒性がないため冬の寒さには注意が必要ですが、それ以外は比較的簡単に栽培することができますし、挿し木で簡単に増やすことができます。もともと土の中ではなく、樹上などで着生して育つ植物なので、水や窒素肥料などは多く必要としません。与え過ぎると株ばかりが生長し過ぎて、花芽が付かなくなることもありますので、水のやり過ぎには注意しましょう。
そして、一晩で萎んでしまう、はかない花を目で楽しんだ後は、舌で楽しんでみませんか。台湾ではスープの具材に開花後の花が使われます。開いた花を夜のうちに収穫して焼酎に漬け込むのも趣があります。一番簡単な食べ方は甘酢和えです。開花した花を翌朝に収穫してさっと湯通しし、甘酢をかけて食べます。重なった花びらのシャキシャキとした歯ごたえと共に、独特のとろみが特徴ですが、青臭さのない味なので、老若男女が楽しむことができます。
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