8月も終わり、花屋はもうハロウィンやクリスマスの準備を始めています。店には夏が始まる前に発注したこれらのイベント用の資材が届き始めているのですよ。本当に月日が経つのは早い!
でもハロウィンの前に、日本ではずっと昔から祝われている行事があるのです。
それは重陽の節句。実は日本には重陽の節句を含めて5つの節句があり、それぞれにシンボルになる植物があるんです。人日の節句には七草、桃の節句は桃、端午の節句は菖蒲、七夕の節句には笹、そして今回ご紹介する重陽の節句は菊の節句とも呼ばれ、日本の国花でもある菊が主役の節句なのです。
現代ですと、9月初めといえば、まだ一般的な庭の菊が咲くには早いのですが(菊は短日植物であるため 夏でも咲くよう品種改良された夏菊は除く)、重陽の節句が行われていた旧暦では、9月9日は10月の中旬。ですから、昔の人はたくさん菊を使ってこの行事を楽しむことができたようです。
今は、栽培技術の発達により、菊は周年栽培(一年中出荷)されており、花屋に行けば観賞用の菊を、スーパーや八百屋さんに行けば食用菊を手に入れることができます。
重陽の節句には、菊酒といって菊を浮かべたお酒を飲んだり、菊湯といって湯船に菊を浮かべてお風呂に入ったりします。もちろん、菊を飾って鑑賞もしますね。
菊を食べるのもいいですね。私は去年初めて山形に行き、「もってのほか」という食用菊を食べてそのおいしさに感動しました。収穫時期は10月頃だそうですから、今年こそ、収穫したての「もってのほか」をいただいてみたいなと思っています。
いつの頃からか、日本では菊というとお供えの花、というイメージがついてしまいましたが、お隣の中国では、友人に贈る花としても好まれているようです。
また、欧米で品種改良された、マムと呼ばれる菊の品種が日本にも輸入されています。花弁がボール状になったピンポン咲きや、花弁が密集して咲く八重咲きのうち丸くなるもの以外をデコラ咲き、花弁が細長く筒状になっていて細長く外に広がっているスパイダー咲き、一重の外弁に花の中心がアネモネのように盛りあがって咲くアネモネ咲き(丁子咲き)など、たくさんの品種が誕生しています。店でもマムを見たお客様が「え、これが菊なの?」「ダリアかと思った!」などと驚かれることもあります。
それから大事なお話をひとつ。
よく店頭で入荷したてのマムを見て「この花、随分咲いちゃっているわねー」というお客様がいらっしゃいますが、昔から売られている輪菊という白や黄色、赤のもの以外、現在出回っている品種のほとんどは圃場(ハウスや畑)で綺麗に咲かせてから出荷されています。入荷した時点である程度ボリュームのあるものが多く、十分長もちしますので安心して購入してくださいね。
これらも全部菊の花(マム)です。
重陽の節句を機会に、菊の素晴らしさを見直してみませんか?
(高橋植物園 高橋さやか)
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