[ムクノキ]古今東西 ご神木巡礼 その51〜瀧野川八幡神社のムクノキと滝野川ゴボウ|アサ科ムクノキ属|エバーグリーン

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北区在住ン十年の著者。しかしながら、この神社は知らなかった。それも園芸と深い関係がある神社だったことでちょっと驚き、さらに、さまざまなご神木を訪ねていますが、ムクノキは初めてかも……。

 

瀧野川八幡神社はこんなところだった

旧滝野川村の鎮守として知られています。御祭神は、品陀和氣命(ほんだわけのみこと・応神天皇)で、創建は鎌倉時代前期の建仁2年(1202年)とか。とても由緒ある古い神社であることがわかります。本殿は江戸末期の造形技術の粋を伝える総欅造り(そうけやきづくり)で細やかな彫刻を見ることができます(明治18年(1885)に改築され、拝殿は大正11年(1922)に修築)。

さらに、社殿の裏手からは縄文時代後期の住居址が発見され、考古学的にも貴重な遺跡のひとつなのだとか。そして、なによりも植物好き、園芸好きな方にお伝えしたいのが、こちらの神社の社務所は終戦直前まで旧中山道に面した場所にある、滝野川三軒家の種子問屋が中心となっていた、東京種子同業組合の会合場所として利用されていたということです。そこで行われる会合で、滝野川ゴボウなどの種子の価格が決められていたとされています。

由緒ある神社であることが感じられる

由緒ある神社であることが感じられる

謂れなどが書かれた看板

謂れなどが書かれた看板

 

境内には滝野川ゴボウが!

筆者が訪れた日は境内には滝野川ゴボウ(キク科)の花が咲いていました。滝野川ゴボウは、内藤トウガラシ、千住一本ネギ、谷中ショウガなどと並ぶ江戸東京野菜のひとつです。ちなみに江戸東京野菜とは、江戸時代から栽培され野菜文化を継承するとともに、種苗の大半が自給や近隣の種苗商により確保されていた在来種や、昔からの栽培法で作られてきた野菜のことです。

境内の滝野川ゴボウ

境内の滝野川ゴボウ

 

江戸時代元禄記(1688〜1704)に滝野川村(現在の北区滝野川)で鈴木源吾により改良、採種されたゴボウのことで、地名から滝野川ゴボウと呼ばれ、国内で栽培されるゴボウの約90%がこの品種から改良されたとか。

花(猛暑の影響でややダメージが)

花(猛暑の影響でややダメージが)

 

ご神木のムクノキ

ムクノキ。このシリーズでは初登場です。漢字では『椋木・椋』と書き、別名は、ムク、ムクエノキ、モクなどと呼ばれています。巨木(老木)になると、幹にうろができて風格のある姿になります。また、花後に1cmほど果実を付けます。未成熟の緑色ですが、熟すと黒く甘くなり食することもできるのだとか。葉にはザラつきがあり、その昔はこの葉を乾燥させ、やすりのよう利用していたとされています。また生薬としても知られ、生薬名では糙葉樹(ゾウヨウジュ)と呼び、樹皮および根皮に鎮痛作用があることが知られています。

ご神木のムクノキ

ご神木のムクノキ

樹齢を感じます

樹齢を感じます

境内にはほかに巨木あり

境内にはほかに巨木あり

 

足を伸ばせば……

瀧野川八幡神社の最寄駅は都営三田線の西巣鴨。その西巣鴨駅まで戻り巣鴨方面に足を伸ばすと、神社の看板にあったあの「東京種苗株式會社」の建物があります。その近くには、種子屋街道について詳しく書かれた看板や、中山道の種子屋について書かれている場所もありました。

東京種苗株式會社

東京種苗株式會社

歴史を感じさせる

歴史を感じさせる

種子屋街道の看板

種子屋街道の看板

中山道の種子屋などについて書かれてある

中山道の種子屋などについて書かれてある

 

エバーグリーン編集部オススメサイト

 

  • 『瀧野川八幡神社』:東京都北区滝野川5丁目26-15

 

(植物文様研究家・グリーンアドバイザー 藤依里子)


ご神木のムクノキ