100年の歴史を超える千葉大学園芸学部。園芸、造園などの分野での多くのエキスパートを輩出しています。今回は、エバーグリーンのオブザーバーでもあるニシハラサイコさんにお誘いいただき、千葉大学柏の葉キャンパス、「環境健康フィールド科学センター」に出かけて来ました。
「環境健康フィールド科学センター」は、その名のとおり、環境と健康に関連した医学、薬学、園芸学など、さまざまな分野を融合、発展させることを目的に設立された教育研究センターとのこと。16.8ヘクタールという広大な敷地には、研究用施設をはじめ、薬草園、果樹園、温室、診療所、農産物直売所などが点在しています。 ニシハラさんの先輩であり、千葉大学園芸学部園芸学科准教授である渡辺均先生に、施設を案内していただきながら、人と植物の関わりを中心に話を伺いました。
人と植物のかかわりを学ぶ場
気温35度を超えるという真夏日、案内していただいたのは薬草園。「この薬草園では、人間の健康にかかわる植物について、薬学部の先生と研究しています。学生が人と植物のかかわりを学ぶ場としても活用しています」と渡辺先生が説明してくれました。約360種類の薬草の手入れは、学生が行っているそうです。薬草の名前を覚えるのと同時に、手入れ方法もここで学ぶというわけです。
アサガオは利尿作用がある薬草
「今でこそ園芸種としてあちこちで見かけるアサガオも、昔は、薬として使われていました。種には利尿作用があるんですよ」
取材の日は気温37度という真夏日。日陰のない薬草園にいるだけで汗が噴き出てきます。喉がカラカラな私に、渡辺先生が「食べてみてください」と手のひらに置いてくれたのはビールの原料であるホップです。口に入れると、胃薬のような苦み。ビールが飲みたい(笑)
「これはメハジキ。ヤクモソウです。利尿作用や婦人科系の病気に使われています。そしてエビスグサ、種はケツメイシ(決明子)と呼ばれ、利尿作用があります」
キアゲハの幼虫の好物!?
「かわいいでしょう」と、渡辺先生が指さした先には、キアゲハの幼虫。無農薬で育てられているアシタバの葉は、まさに幼虫たちのレストラン状態です。アゲハチョウは、種類によって、食べる植物が決まっていて、それを食草というのだそうです。そしてその幼虫を狙う鳥もいるのだとか……。
渡辺先生とニシハラさんは、ニコニコしながら、「ここにはキアゲハ、ここにはジャコウアゲハのさなぎの抜け殻」と、なんだかうれしそうです。しかし、どう見ても、私には「かわいい」とは思えませんが(笑)
でも、考えてみれば、昆虫や鳥が食べている植物なら、人間が食べてもだいじょうぶってことですか?
「鳥や虫が食べている植物は、基本は、人間が食べてもだいじょうぶですよ。でも、おいしいかどうかは別ですけれど」
さまざまな形で人の暮らしとかかわる植物
「食べられる=すべて健康の源という意味では、野菜も薬草です」。キュウリ、ピーマン、ゴボウ。見たことのある野菜が並んでいます。
ゴボウの種は薬にもなりますが、この形が面ファスナーのヒントになったそうですよ。
「日本ではグリーンカーテンに使われることがあるフウセンカズラ。アフリカでは薬として使われているんです。種の模様が、サルの顔やハートに見えませんか?」
「種の代表選手といったらゴマです。整然と並んでいるでしょう。逆さにするだけでパラパラと出てくるので、収穫も楽なんですよ」
花は見るもの? 野菜は食べるもの?
薬草園と聞いて、どんなに難しい植物が並んでいるのかと思っていましたが、ふだんの生活のなかで、目にしたことのある植物ばかり。
「昔は、身の周りにあった植物を、医、食と健康のために使っていました。それがだんだん花、野菜、果物と細分化されるようになってきたんです」という渡辺先生の言葉にいたく納得。お話を伺うまで、「花は見るもの、野菜や果物は食べるもの」という概念にとらわれていた気がします。
薬草園は、平日9時から5時までは、見学が可能とのこと。2カ月に1度は、市民講座も開催されているそうです。また、農産物直売所では、農場で学生が栽培、収穫した野菜や果物、花や樹木も購入できますよ。
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