日当たりの良い低山地・河原・野原や伐採跡などに生息する「ジャケツイバラ」を紹介します。漢名で「蛇結茨」と書きます。本州(宮城県・山形県以南)~四国・九州・沖縄に分布します。東北地方では絶滅危惧種に指定されている貴重な樹木の一つです。マメ科ジャケツイバラ属のややつる性の落葉低木で、高さ2m程度になります。枝はよく伸びて約10mにも達するといわれています。
今年(2022年)5月下旬、山梨市内のある山へ繋がる林道の斜面に群生するジャケイバラを見つけました。この山には足慣らし目的で月1回以上は訪れますが、昨年まではまったく気付かずにいました。数年前から林道周辺斜面などの伐採が進み、日当たりがよくなったことでジャケツバラが息を吹き返したと推察しています。
富士山が真正面に見える斜面に、黄色い花が周りの緑に映えてみごとです。斜面から良い香りが漂っていたこと、蜜蜂なども飛び交っていたことから、この黄色い花が目に飛び込んで来ました。現在はまだまばら感はありますが、数年後の5月中旬~6月上旬の間、この斜面全体が黄色いジャケツイバラの花で埋め尽くされそうな期待でいっぱいです。この場所から少し離れた川沿いの登山道にも若木が数本あることに気づきました。花を付けるのは数年から10年くらいあとでしょうか?
上の写真のように葉は6〜16個の羽片からなり、小葉は各羽片に5〜12対付きます。長さ10〜25mm、幅5〜10mmの長楕円形で先は丸みを帯びています。草のように柔らかく、裏面は粉白色です。良い香りがして葉の触覚も独特ですが、枝はもちろん、葉軸や葉柄には下向きの刺がたくさん付いているので要注意です。この刺はどんどん固く成長するので、念頭に置いてください。葉の落ちた枝が絡みつくようになった姿とこの刺が、「蛇結茨」の謂れとなります。
自然環境に適合しながら生き抜く植物たちのたくましさを、このジャケツイバラも見せてくれています。伐採跡に姿を見せ、数年後にはこの黄色い花で斜面を覆い尽くすだろうという期待がある一方、数年~10数年後の環境変化(周りの木々の成長などで日当たりが悪くなること)により見られなくなることも予想されます。
次の写真のとおり、実は成長すると長さ7〜10cm、幅3cmほどになります。以前に紹介したネムノキの実とよく似ていますが、長さはやや短く幅が1.5〜1.8倍くらい広いイメージです。最初はエンドウ豆のような緑色の薄っぺらな鞘ができて、最後の写真のように茶色に熟します。種は黒褐色で長さ約1cmの楕円形をしており10個程度です。殻が割れて落下し始めているのもありました。この種は有毒ですが、根や葉を含め生薬の雲実(うんじつ)として利用されます。解熱や下痢止めなどに効くそうです。
山歩きや森林セラピーの度に自然の力の凄さを痛感していますが、いつまでも美しい花々が見られる豊かな大自然を次世代へとつなげていけるようにしたいものです。微力ながらも、自然環境保全のための活動や日々の自然へ優しく関わるよう努めていきたいと思って行動しています。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))