[トクサ]日本の植物文様〜トクサ|トクサ科トクサ属|エバーグリーン

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今回はちょっと変わった文様、木賊文(とくさもん)を紹介します。ちなみに、トクサはトクサ科・トクサ属に分類される常緑性のシダ植物。ツクシの仲間の一種とされています。竹に似た和風の雰囲気があることから日本庭園をはじめとした庭先などでも目にすることができます。漢字では「砥草」とも書かれ、茎で歯を磨いたことから「歯磨草(はみがきぐさ)」の別名でも知られています。とくさは文様のなかでも目にすることができます。

 

細い円筒形の節が魅力的なのか…

トクサ

トクサ

 

棒を並べたように見えるトクサ。文様では「木賊文」と書かれるのが一般的です。ユニークなその形から、能装束や友禅染にも用いられるほか、トクサ風に描かれた縦縞はトクサ縞と呼ばれます。有田焼でまっすぐに上に伸びるトクサのように線描きしたものを「十草(トクサ)」と呼ぶことに似ています。また、家紋のなかには円形に構成した木賊丸紋があります。

キモノに描かれていた鮮やかな木賊文

キモノに描かれていた鮮やかな木賊文

夏の羽織でも見ることができる

夏の羽織でも見ることができる

 

道行のなかでも目にすることが…

道中着に使われた額縁状の小襟のついた襟明きの四角い和服用コートのことを「道行きコート」「道行きぶり」と呼びます。トクサ縞は、筆者のコレクションの道行の裏に使われていました。

道行の裏地のトクサ縞

道行の裏地のトクサ縞

 

あまり一般的ではないトクサが文様化されたのはなぜ?

文様のなかでも、正直かなりユニークな存在のトクサ。そこで調べてみると、なんと金運上昇に結び付くのだとか。筆者は実験していませんが、なんでも金をトクサで磨くとピカピカになることから金運上昇にと。さらに、風水的には上に上にと伸びることから人気運が上がるのだとか。

それともうひとつ、あの江戸時代中期~後期の絵師として知られる円山応挙が明和7年(1770)~安永元年(1772)頃に描いた『花鳥写生図巻』のひとつにトクサとウサギを組み合わせ描いた木賊兎図があるからだと、ともされています。このトクサとウサギを組み合わせた図案は文様では「木賊兎文」と呼び、江戸時代には流行にもなったとされ、今でも染織などではよく目にすることができます。

ちなみに、ウサギはお産が軽いことから安産、耳が長いので良いことをキャッチする、さらにピョンピョンと跳ねることから上昇に結びつくとされていますので、トクサとウサギを組み合わせは最強、なのかもしれません。

 

なかなか目にしない文様だからこそ…

なかなか目にすることがない文様。ある意味、上手に取り入れ着こなすことで、粋な感じがするかも知れませんね。ほかにも、ちょっと珍しい植物文様がありますのでこれからもご紹介をさせていただきます。

(藤依里子 植物文様研究家/日本図案家協会準会員)


トクサ