アメリカフウロ(フウロソウ科フウロソウ属)は名前の通りアメリカ(北アメリカ)原産のザッソウで、昭和初期に日本にやってきて根付いた帰化植物です。近い仲間(同属)にゲンノショウコがあり、こちらは日本原産。薬草として有名です(下痢止めの民間薬として知られます)。
ほかにフウロソウ科といえば、園芸で俗にいうゼラニウム(テンジクアオイ属)、さらに名前の似たものつながりで、ヨーロッパ原産の帰化植物、オランダフウロ(フウロソウ科オランダフウロ属)などを思いつきます。
オランダフウロは春から秋の間、道端や空き地、荒れ地でごくあたりまえに見られます。カラスノエンドウなど生育旺盛でよく茂るザッソウのなかで負けずに生えていることもあります。細かく枝分かれして、場所によっては茂みを作ります。
要するにありふれたザッソウですが、筆者はコイツのことが嫌いではありません。庭に生えてきたときも、(育てている植物の)邪魔にならない限り、意図して残していたくらいです。
好きな理由は葉っぱの形です。この葉っぱ、深く切れ込みの入った形をしていますが、アウトラインは円形なのです。それがどうした、といわれそうですが、何かこの形に強く惹かれるのです。言葉で伝えづらくもどかしいです。
あえて説明しますと、葉っぱの一部だけ見ると細身で繊細な感じなのに、全体は丸くて安定感のある感じ、という一見相容れない二つの要素が融合しているところがよいのです。我ながら何を言っているのかよくわかりません。
また、紅葉した葉っぱもかわいらしいです。特に縁の部分だけが赤く色づいたものは緑色部分との色合いが美しいです。紅葉といっても季節にあまり関係なく色づいている気がします。
葉っぱばかり褒めてしまいましたが、花もちゃんと咲きます。花色は白に近いピンクで、花びらは5枚です。大きさは5~6mmと小さめですが、アップで見るとなかなか上品な姿です。
花後には細長く尖った果実ができます。一見、尖った部分にタネが詰まっていそうですが、実際は付け根のふくらんだ部分に入っています。
果実は熟すと黒くなり、パチンと裂けて跳ね上がり、タネが弾け飛びます。タネがはじけ飛んだあとの殻は外れてしまうことが多いですが、ときおり本体側にくっついたまま残ります。バネのように反り返った殻は、果実が勢いよく弾けたことを物語っています。
今回はアメリカフウロを紹介しました。その魅力、伝わりましたでしょうか? 筆者の推す観察ポイントは「葉の形」「紅葉」「タネを飛ばしたあとの果実」の3点です。近所で見かけたらぜひ観察してみてほしいと思います。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)