今年の梅雨はなんだか雨の日が多く感じる水戸ですが、みなさんお住まいの地域ではいかがでしょうか。松尾芭蕉に「紫陽花や 藪を小庭の別座敷」という句がありますが、どこを歩いていてもぽっかり紫陽花(アジサイ)が咲いている場所は眺めがよくて、体をきゅーっと縮小して葉の下に花を眺めながら暮らす部屋が欲しいなと思います。絶景の中で暮らすカタツムリやカエルたちが少しうらやましいですね。
さて、初夏を彩る花といえばアジサイのほかにヘメロカリスの仲間も欠かせません。日本にはニッコウキスゲやヤブカンゾウ、ノカンゾウが自生しています。ユリのような1輪の花それぞれは1日で終わってしまいますが、次から次に開花するので夏までじっくりと楽しむことができます。
イギリスの植物園や個人の植物コレクターのお宅を回る旅の途中で、ヘメロカリスのコレクションを集める方のお宅に伺ったことがあります。キレイに整頓された庭の中は右を見ても左を見てもヘメロカリスが植わっていて、よっぽどお好きなんだなと感激しました。見せていただいたヘメロカリスは日本で一般的な黄色や卵色の花以外に、紫色やピンク色、なかには花弁と蕚の色が違うものなど色とりどり、花の形も普通のユリ型以外にクモが脚を広げたような形や八重咲などがあり華やかでした。
ヘメロカリスは暑さ寒さに強く植え付ける土壌を選びません。乾燥にも多湿にも強く、地植えにすれば細やかな管理が必要ないのがうれしいところです。日当たりのよい場所でのびのびと育ててください。なによりも楽しいのはヘメロカリスが中国では食用や薬用として栽培されてきた歴史があること。花や若葉を食べることができるのです。
イギリスのヘメロカリスコレクターの方は「花の色によって味が違うんだよ」と仰っていて、何輪か食べ比べてみたのですが、色によって違いが分かるまではいきませんでしたが確かに甘みが強い品種やさっぱりしているものなどさまざまでした。
園芸初心者の方でも楽しみやすいヘメロカリス。品種によって開花期も違うのでお気に入りの一輪と出合えるといいですね。
(水戸市植物公園 宮内元子)