黄色い花を咲かせて花後に綿毛の付いたタネを作る。要するに「タンポポ似のザッソウ」のひとつ、それがノゲシです。春〜夏に咲きますが、暖かい地域なら冬でも花を咲かせることがあります。
名前からケシを連想するかもしれませんが全くの別物(そもそもケシ科ではなくキク科の植物)です。有史以前に中国経由で日本に入ってきたとされます。このような植物を史前帰化植物と呼びます。
アキノノゲシと区別するため、ノゲシのことをハルノノゲシとも呼びます。アキノノゲシはキク科Pterocypsela属、ノゲシはキク科ノゲシ属で同じ仲間ではありません。余談ですが、みなさんがよく食べてる野菜のレタスとアキノノゲシを同じ属に分類する見解もあります。筆者は経験ありませんが、ノゲシも若葉をサラダなどで食することができるそうです。
道端、畑地、荒地、鉄道の線路内など、場所を選ばずいろいろな場所に生えています。ザッソウにはありがちですが、開花時の草丈は場所や季節によって大きく違います。20cm程度でこぢんまり花を咲かせている株もあれば、1mを超す高さで葉も大きく茎も太い堂々とした株をみることもあります。株の大きさに関係なく花径は2cm前後です(大株のほうが数はたくさん咲いています)。明るい黄色で比較的目に付きやすく、葉や茎を切ると白い乳液を出します。
葉っぱは縁がトゲ状になっていますが、軟らかいので触っても痛くありません。これがオニノゲシ(後述)ならかなり痛いです。基本的に冬はロゼット状で越します。切れ込みのある葉っぱが円を描くように並んだ姿はなかなか印象的です。
せっかく名前が出てきたので、オニノゲシも紹介しましょう。オニノゲシはヨーロッパ原産で、明治時代に渡来して各地に根付いている帰化植物です。
見た目、大きさ、生えている場所、開花時期などがノゲシとかぶります。二種は同属で、比較的縁の近い植物同士だといえます。葉のトゲトゲが鋭く、先ほど述べたように触れると痛いです。そんな荒々しい姿から「オニ」の名前が付けられました。
二種をどう見分ければよいのか、ここまで読んでいただいたら何となく想像できるでしょう。そうです! 葉を掴んで痛かったらオニノゲシです!(笑)
ウソです(あながちウソとも言い切れませんが)。そんな目にあってまで判断したくないですよね。見分けるポイントが葉であることは変わりないですが、見た目である程度あたりがつきます。
オニノゲシはノゲシと比べて葉に厚みがあり表面にツヤがあります。そして一番の注目ポイントは「葉のつけ根」、要するに茎との接合部分です。オニノゲシは茎と葉の基部が完全にくっついていて、後方にまるく張り出します。
それに対してノゲシは葉の基部が完全にくっついてなくて、三角形に張り出します。「ノゲシは葉の基部がネコミミのようになる」と脳内で解釈していますが、誰にもわかってもらえません。観察するなら茎の上部の葉がよいです。なぜなら大きく張り出すことが多いからです(下部の葉は張り出していないことがあります)。
しかし例外もあります。以前、オニノゲシのようだけど葉の付け根が三角に張り出しているような微妙な個体に遭遇したことがあります。アレはなんだったんだろうと、この記事を書いている途中で思い出しました。また探しに行ってみようかな、今なら判断できる気がします。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)