今回は、雪解けを待ちわびて現れる「ハナネコノメ」を紹介します。
ユキノシタ科ネコノメソウ属の小さく柔らかい多年草で、樹林下の沢沿いの湿地に生えます。シロバナネコノメソウの変種といわれ、本州(福島県~京都府)に分布します。
対生する葉は扇状円形~円腎形で、上縁は5個の半円状の鋸歯になっています。花茎の高さは5〜10cmで、暗紫色を帯びており白色の軟毛が疎(まば)らに生えています。花期は3月下旬~4月といわれますいますが、西沢渓谷は標高が高いので4月に入ってからの開花となります。
1枚目の写真のように、開く前の萼片と暗紅色の葯(やく)のコントラストが目を惹きます。この姿が和名「ハナネコノメ(花猫の目)」の由来とされています。萼裂片は4個で長さ3〜5mmの長卵形をしており、先端は円頭または鈍頭です。雄蕊は3.5〜6mmに成長し、萼裂片よりも突き出るのが「ハナネコノメ」の特徴でもあります。
ハナネコノメが生息している場所はいずれも水気が多く、一見してネコノメソウ属が好みそうな場所だとわかります。ネコノメソウが混在することが多いですが、ハナネコノメは約半月ほど早いと思います。3枚目の写真の黄色がネコノメソウですが、これは開花前です。
4月に入ると西沢渓谷(4月28日まで冬季閉鎖)に下見で入ることがありますが、ハナネコノメや苔などが活き活きしている様子を見ると、『春が来たな!』と感じます。笛吹川の源流の一つである西沢渓谷の下流域、三富地区にある小さな渓谷や笛吹川へ注ぎ込む小さな沢沿いでもハナネコノメが自生していますので、興味のある方はそちらでの探索をおすすめします。以前、東京の高尾山でもハナネコノメの花に出あったことがありますが、時期は3月中旬頃だったと記憶しています。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))