はじめに:園芸のジャンルはあいまい
園芸では植物を「庭木」「山野草」「鉢花」「観葉植物」「野菜」「ハーブ」というようにジャンルごとに分類します。分類するということは、何かしら共通点がある仲間同士で分けられているはずです。具体的には「性質が似ている」とか「用途が近い」などが挙げられるでしょう。ただ、これらの分類はあいまいです。
たとえば、パセリやシソは園芸では野菜なのか? ハーブなのか? といった感じに。いやいや薬味でしょうとおっしゃる方もおられるかもしれません。薬味が園芸での植物ジャンルといえるなら……ですが。要するに捉え方は人により異なるでしょうし、パセリやシソはハーブでもあり野菜でもあるともいえるでしょう。
話が少し逸れましたね。今回はシェフレラという植物についてのお話です。
このシェフレラ、一般的には「観葉植物」として扱われていますが、筆者は「庭木」でもいいんじゃないか? と思っています(個人的見解です)。では、なぜそう思うのかを、これからお話ししていきたいと思います。
シェフレラとは
シェフレラにはたくさんの種類があります。今回紹介するのは、アルボリコーラ種とその園芸品種です。園芸では単にシェフレラと呼ぶと本種を指すことが多いです(以下、シェフレラ=アルボリコーラ種とします)。
カポック、ホンコンカポックの名前で流通することもあるのですが、本来カポックは別の植物を指しシェフレラをそう呼ぶのはまちがいで、葉の姿が似ているところからの誤用です(ここ、ポイントです。おさえておきましょう)。ちなみになぜホンコンかというと、「ホンコン」という名の園芸品種があるからです。そのままですね(笑)。ホンコンはよく知られている園芸品種で、葉の先端がとがらずに丸くなるのが特長です。ホンコン以外にも斑(ふ)入り葉の園芸品種などがあります。
庭木扱い?
筆者がシェフレラ(のジャンル)を「庭木でもいいんじゃないか?」と思っているのは、そのあたり(京阪神地区)の庭など屋外で育っているものをやたら見かけるからです。鉢植えのまま放置されているような株もあれば、地植えされている株もあります。屋外で青空の下、葉を茂らせてのびのび生長する姿は観葉植物というより「庭木」です。
しかし、これらのシェフレラ、最初から屋外で育てられていたものではないと思うのです。
鉢植えで購入(この時点では観葉植物)
↓
大きく生長したので屋内では邪魔(ん! クラスチェンジか?)
↓
そうだ! 屋外に出そう(ここで庭木に!)
その結果、シェフレラは観葉植物から庭木へとクラスチェンジを果たしたのでした、というパターンが案外多い気がします。植物に歴史あり。
シェフレラは耐寒性も多少あり(気温が0℃くらいまでなら平気)、病害虫も少なくて場所もあまり選ばずに育つので、屋外で放置しても問題なく育つことが多いのでしょう。
気温が0℃以下になると、株が傷んだり枯れたりすることがあるので、どこでも庭木として扱うことはできないでしょうが、霜の心配がない地域では充分活用できる気がします。
庭木としてのシェフレラに興味のあるみなさんには、ぜひ生垣に挑戦してほしいです!
余計なはなし
拙宅の庭にも以前シェフレラがありました(残念ながら今はありません)。
鉢植えの株を地面に直置きして育てていました。いえ、放置していました。数か月後に動かそうとしたら、鉢が地面に張り付いたように動きません。鉢底から地面に根を下ろし、文字通り張り付いていました。
みなさまも鉢植えの直置きに気をつけましょう、という自戒の念を込めた「園芸あるある」でした。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)