今回は、山地帯上部から亜高山帯の林床などの潤湿地に生える「ハリブキ」を紹介します。
ウコギ科ハリブキ属の落葉低木で、全体が刺で覆われており葉がフキに似ていることからこの名前がついています。北海道から中部以北の本州や四国に分布する日本の固有種です。
樹高は約1mまで成長します。いずれの写真もほぼ真上から撮っていますが、これらの高さは約50〜60cmです。写真から湿っぽい場所であることがうかがえますね! 冬期はかなりの積雪がありそうです。
花期は6〜7月ですが、北アルプス・南アルプス・八ヶ岳など、標高約2,000mの高地では梅雨明け後の7月が花の見頃のようです。山梨県内のほかの山でもハリブキの葉を見かけますが、花は大きな葉っぱの下に隠れており、淡緑色で目立たないことも手伝って花を見過ごしている可能性があります。しかも、梅雨どきと重なってしまうため、花に出合う機会が少なくなるのかもしれません。
花は芳香があり、蜂などが蜜を求めて集まってきます。顔を近づけると甘い香りを確認できますが、葉の表面には刺があり裏面にも刺や毛が生えていますので、頬や鼻などを刺さないよう注意が必要です。7〜9列に浅く避けた葉とその裂片の鋸歯などが独特でついつい触れたくなりますが、友人や森林セラピーの体験者などには触れないように注意を促しています。特に幹には強烈な刺が生えていますので、絶対に触れないようにしてください。刺の鎧は、鹿の食害から身を守るための「ハリブキ」の知恵かもしれませんね。
一方、ハリブキは民間薬としても知られています。実を乾燥させたものは利尿やむくみに効果があるほか、根は解熱剤として使われるようです。根には強い芳香があるとのことで、漢方薬用でもかまわないので直に香りを嗅げたらと思っています。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))