私の働く店の周りには、まだ自然が多く残っていて、秋の夕方になると 「リーンリーン、チッ、チッ」と、美しい虫の音が聞こえてきます。物陰に潜み、短い命ながらに一生懸命鳴く虫を想うと、なんだかとても切なくなります。
そんな秋に花屋に並ぶ、お勧めの植物、枝ものを今回はご紹介します。
フウセントウワタ
独特なフォルムのこの植物は、南アフリカ原産、ガガイモ科。どうやら初めて見る方にすごい衝撃を与えるようです。しかし、なぜか生け花の先生にとても人気のある植物です。
緑でとげとげした丸い部分は果実で、切り口から白い乳液が出ます。この白い液は時間をおくと固まってしまうため、植物は水を吸えなくなります。ですから私の店では、入荷した時に切り口を切って湯上げ(切り口を90度位の湯に30秒付けてからたっぷりの水につけてしばらくおく)という方法で水揚げをしています。
肌の弱い方は、白い液がつくと、かぶれることもありますので、触った後は必ず手を洗って下さいね。また、目に入ると角膜炎を起こすこともありますから、絶対に目をこすらないでください。
一度しっかり水が上がればかなり長持ちします。時間が経って果実が熟すと縦に避け、白く肌触りのよい冠毛をつけた種がびっしりと姿を現し、風に乗って種子が運ばれていきます。
また、この植物は茎と果実の付け根のところにアブラムシがつきやすいので、買ってきたときに虫がいないかよく確認してくださいね。
鈴バラ
この植物の正式名称は“Rosa setigela”です。
鈴なりにつやつやの赤い実がなるこの枝ものは、5月ごろ、淡いピンクで5弁の花を咲かせ、秋にローズヒップ(実)がなります。北海道深川町で1975年ころから栽培が開始され、鈴バラという名前は商標登録もされているようです。
この実はレモンの60倍のビタミンを含んでいます。この品種に限らず、ローズヒップは漢方薬や健康食品としても世界で広く利用されています。ただ、切り花として流通しているものは農薬を使用している可能性が高いのでこの実を食用にするのは避けてくださいね。
枝の姿は弓なりで、かわいらしい赤い実が枝ごとに数個ずつついています。もともとは葉がついているのですが、それを綺麗に掃除して、丸裸の状態で出荷されるようです。また枝には無数の鋭いとげがついています。出荷時期は1カ月くらいと短く、価格も高めですが、観賞期間も長いのが特徴です。花屋で見かけたらぜひ購入して欲しいですね。
シンフォリカルポス
私の一番のおすすめです。
シンフォリカルポスは、北アメリカ原産の落葉低木でスイカズラ科。スイカズラ科には他にアベリアやタニウツギ、ガマズミなどもあります。別名は雪晃木、スノーベリーです。
実は白またはピンク、グリーンなどがあり、大きいもので1センチくらいのぷりぷりした丸い実がいくつかまとまってつきます。たわわに実って弓なりにしなる様子がかわいらしく、とても人気があります。
店頭でお客様に「この実、おいしそう」とか「食べられますか」などとよく聞かれますが、残念ながら食べられませんのでお子さんには気を付けてくださいね。一般的な大きい実の品種が出回った後に、出回る原種に近い赤い小さな実がまとまってつくものもおすすめです。
いかがでしょうか。この他にも秋にしか出回らないおススメの花が店頭にずらっと並びます。ぜひ、花屋をのぞいてみませんか。
(高橋植物園 高橋さやか)
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