[雑草]雑草を通して人生を考えさせられる 甲斐信枝さんの絵本「雑草のくらし」|エバーグリーン

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田舎暮らしをしていると、やはり草刈りは重労働です。

年に何回か、地域の「草刈り」は義務として行いますし、庭や畑の草たちの伸びる勢いのすさまじさといったら!

草むら同然になってしまった畑

草むら同然になってしまった畑

 

野菜を作るときには、種をポットにまいて、発芽させ、ある程度まで育ってから、苗を畑に植えることが多いです。

最初、経験のない私には、この工程が無駄に感じられました。どうせ、畑に植えるのだから、何もわざわざ植え替えの手間を増やすなんて……と。

しかし、実際に畑で種を直播きしてみたら、この工程が必要である理由がよくわかりました。

先日、ゆずりうけた大事な白菜の種を、3分の2ほどポットに種き、残りを畑に直播きしてみました。数日後、ポットの土からも、畑の土からも小さな芽が出ていて、大喜びしていたのですが、さらに数日後、畑に行くと……ガックリすることになりました。

ポットにまいた白菜の種が発芽した様子

ポットにまいた白菜の種が発芽した様子

畑にまいた白菜の種が発芽した様子

畑にまいた白菜の種が発芽した様子

 

雑草と白菜の芽の区別がつかない!

数日前、小さな発芽を確認したときに、まわりの草は全部きれいに抜いたはずでした。

にもかかわらず、もはや、雑草なのか白菜なのかわからない状態に。

このまま草を抜かなければ、白菜は草に負けて育たないだろうし、かといって、どれが草でどれが白菜かわからない……。

数日後、白菜と雑草の区別がつかなくなった畑

数日後、白菜と雑草の区別がつかなくなった畑

 

とにかく、雑草たちの勢いはすごいのです。

もはや植物というより動物に近いとさえ感じます。

けれど、そんな雑草が嫌いかというと、決してそんなことはなく、あっという間に畑が草むらになる様子にげんなりしながらも、その営みに心動かされる気持ちもわいてきます。

 

雑草たちと向き合ってから、すごく印象的な絵本に出会いました。

甲斐信枝・作 「雑草のくらし」 福音館書店

甲斐信枝・作 「雑草のくらし」 福音館書店

 

1985年に発行されたこの絵本は、ロングセラーとなって、今なお読み継がれています。

何がすごいって、畑の一区画を5年間もの間、手を加えず自然のままにして、雑草たちの生態を取材して描かれた作品であるという事実。

 

絵本には、雑草たちのドラマチックな生存競争の様子が描かれています。

春、夏、秋と地上で激しく闘った雑草たちも、冬は全部枯れてしまう。しかし、地下では雑草たちの根っこや種がひっそり生き抜いて、芽を出すチャンスをうかがっています。

そして、1年目に一大勢力を誇っていた草は、次の春にはもうその勢力を失い、別の草が勢いを伸ばすというのですから、まさに諸行無常。人生の浮き沈みと重なります。

 

この絵本は、雑草たちのくらしを通して、自分がどう生きるのか示唆してくれ、これまでの人生に腹オチする感覚さえ与えてくれる1冊です。

よく見かけるけれど、名前を知らなかった草花の生態についても知ることができますよ。

まだ読んだことのない方は、ぜひ、読んでみてください。

 

(田舎暮らし イシダヨウコ)


甲斐信枝・作 「雑草のくらし」 福音館書店