日本の庭園によく植えてあるマツの木。伝統的な和の風景として、私たち日本人にはなじみ深く映ります。
山口県萩市にある藩校明倫館跡地(現在は、その跡地に建った木造小学校を改装して萩・明倫学舎という観光施設になっています)には、樹齢100年を超えるクロマツの木が何本かあります。そんなクロマツについて、樹木医の草野隆司先生にお話を伺いました。
このクロマツ、近寄って木の幹をよく見ると、古い傷があります。
日本の古いマツの木には、このような古い傷が必ずあるといいます。
その理由、わかりますか?
実は、戦争のためについた傷なのだそうです。
太平洋戦争のとき、燃料がなくなった日本は、松脂(マツヤニ)を採取していたのです。日本軍が武器を作るため、お寺の鐘、一般家庭の鍋などの金属が回収された時代、マツヤニすらも燃料にしようとしていたのです。
そして、マツの木といえば、マツボックリ。リースの飾りとしても、人気ですよね。しかし、そのマツボックリがマツの木を大量に付けることがあるそうです。そんなときは、樹木医の顔がくもる危険な状態。
マツの木は、「自分が死ぬかもしれない」と感じると、子孫を残そうと大量にマツボックリを付けるのです。命を繋ぐため、パワーの配分をコントロールしてしまうなんて、強い意思を感じますね。
そして、マツボックリが少々多めについていたクロマツの木をよく見ると、ところどころマツヤニが染み出ていました。
マツの木は、病んでくると、自らヤニを出して病を癒やすのです。琥珀色の美しいマツヤニですが、マツが「少し苦しい」というサインでもあるようです。
そして、こちらのクロマツ。池のまわりの金属の柵をぐにゃりと曲げてしまっています。
マツの木も、「ちょっと休憩したいなぁ〜」と金属の柵に「どっこらしょ」とよりかかって一休みしています。
なんだかかわいらしい一面もあるのですね。
大きなマツの木に出合ったら、そんなところにも気をつけて見てみると、木の気持ちが伝わってくるかもしれません。
(田舎暮らし イシダヨウコ)
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