首都圏から山口県萩市の農村部に移住して7年目を迎えました。自然いっぱいの環境に住み、畑で野菜を育てたり、農家で働いたり、自然農を学んだりして、草木や植物に親しんできました。それでも、まだまだ知らないことだらけ。農業や自然のサイクルは、1年に1回の収穫というものが多く、たった7回の季節を経験しただけでは、まだまだ「新米」という感じです。季節に追いかけられて、あっという間に過ぎていく毎日が過ぎていく田舎暮らしの中から、畑の話をお伝えします。
食卓でおなじみのジャガイモ。庭や畑で育てたことのある方も多いのではないでしょうか。そんなジャガイモについて、珍しい現象を目撃したのでお伝えしたいと思います。
まず、ジャガイモについてかんたんにおさらいしましょう。ジャガイモはナス科ナス属の植物で、原産国は南米アンデス高地。日本での栽培時期は、3月〜4月に植えて5月〜7月に収穫する春植え、8月〜9月に植えて11月〜12月に収穫する秋植えの2パターン。新ジャガが食べられる旬の季節は、初夏と秋ということになります。
植え付けは、通常、「種イモ」を植えます。そして、収穫は土に埋まっているイモを掘り起こします。収穫時期の目安は、土から出ている葉や茎が枯れはじめてからと言われています。
ちなみに、日頃食べている、土の中にできるジャガイモは「根」だと思われがちですが、根ではありません。成長した茎で、「塊茎(かいけい)」です。このように土の中の茎を食べるものとしては、里芋も同様です。
さて、ジャガイモの土の中の話から地上の話に移ります。ジャガイモは花が咲いたあとに実をつけることがあるのを知っていますか?ものすごく珍しいというわけではないそうですが、私は何度か畑でジャガイモを栽培したことがあるものの、実がついたのを見たことはありませんでした。
先日、とある畑で、まるでミニトマトのように実がたくさんついたジャガイモ畑があるという情報を得ました。そこは、本州から船で25分ほどの距離にある離島で、イノシシや猿、鹿などの獣害がなく、常時島に住んでいる人がいるわけではなく、定期的に本州から船で通って農業をしている人がいる島です。その島の方も、「こんなのは初めて見た、ビックリ」と。
通常ジャガイモは土の中のイモから繁殖するので、花に雄しべと雌しべがついてはいても、繁殖能力が低いため、花が咲いても必ず受粉して実がつくわけではないのです。ジャガイモの収穫量を増やすという観点からすると、花が咲いたら実がつかないように取ってしまうのが正解だそうです。実を実らせることにエネルギーを取られてしまうと、肝心の茎の成長が弱まってしまうためです。
実をつけ種を残そうとするジャガイモには、「色気」のようなものがあり、なんとも生命力が溢れている感じがしました。一体なぜ、そんなにパワフルなジャガイモが育ったのでしょう。まず、その土地は長いこと耕作されていませんでしたが、かつてはジャガイモを育てていた人がいて、とてもよく育っていたそうです。地形的にも合っていたのでしょう。それから、ジャガイモを植える前の土づくりの際、竹林の腐葉土や枯れた笹の葉をたくさん入れたとのこと。こうすることで土の微生物が活性化し、ジャガイモが生き生きと育つ土壌になったのかもしれません。
ジャガイモの実は食べられなくはないそうですが、若い実には「アルカロイド」という毒の成分があり、完熟するにつれて少なくなっていくようです。完熟した実であれば食べても危険はないようですが、さほど美味しくもない、とのことなのでおすすめはしません。
実がつくということは種がとれるので、種を蒔いてジャガイモを育てることもできます。品種改良などをするときは種から育てるようです。ここ山口県萩市の農産物直売所には、たくさんの品種のジャガイモがズラリと並びます。品種改良をするときには、異なる品種の花から花粉を交配させてできた種から育てることになるので、さまざまな品種が楽しめるということは実と種のおかげということになりますね。