今年は夏から秋への急展開ぶりに振り回されっぱなしでしたね。植物たちにとっても過酷な天候です。ぐっと下がった気温に葉は美しく色づくかもしれませんが、あまり長くは楽しめないかもしれません。紅葉の見ごろが気になりますが、ほかの植物たちも冬に向けて美しさを増す季節です。今回は花壇を彩る植物のなかから日本固有の植物を紹介しましょう。
アキギリは山地の木陰に見られるシソ科の植物です。ハーブとして重用され腸詰料理のソーセージの名前にまで入っているセージ、または夏の花壇に欠かせない赤い花が印象的なサルビアの仲間といえば伝わりやすいかもしれません。
春に紫色の花を咲かせるキリ(桐)に似た花を秋に咲かせることから名づけられていますが、ほかにも琴柱草(ことじそう)という別名があります。夏の直射日光を避け、風通しと水はけのよい落葉樹の下などの場所に植えれば特に手間のかかる管理は必要ありません。唇状の紫色の花は内側に毛が生えていてざらざらします。春に若芽を収穫して塩で茹であく抜きをすれば食用になります。
サルビアの花は赤や紫色が主流ですが、黄色い花があるのをご存じでしょうか。キバナアキギリはその名のとおり淡い黄色の花が愛らしい日本固有種です。
実は水戸市植物公園にはアキギリとキバナアキギリの交配種を多くコレクションとして所有しています。黄色に紫の下唇の花や白花の縁に紫色が筋状に入るもの、桃色に紫色の下唇の花など、一つとして同じものはないのかと思うほど多彩な展開を見ると花粉を媒介してくれる昆虫の働きの凄さに驚かされます。
ところでシソ科の代表的な植物といえば日本料理には欠かせないオオバですが、日本では縄文時代から食べられてきたといわれるほどお付き合いの長い植物です。シソ科にはほかにローズマリーなども代表的な植物として挙げられますが、特徴は茎が四角形をしていることです。指で太めの茎を触ってみてください。しっかり四面が平たく柱のように四角形をしていることがわかります。
(水戸市植物公園 宮内元子)