個人的にイネ科のザッソウといえば「エノコログサ」が真っ先に思い浮かびます。炎天下にも負けずぐんぐん生長し、おのれの生命力を見せつけるかのようなその姿は(除草するものにとっては)驚異です。
生育環境は日当たりの良い乾燥地で、道端や野原でごく当たりまえに生えているので見たことがある方も多いと思います。エノコログサなんて知らない、というかたも「ネコジャラシ」と言ったらピンと来るのではないでしょうか。こちらの名前の方が身近で親しみがあります。ちなみに、雑穀のアワ(粟)はエノコログサの仲間(イネ科アワ属)です。
俗に言う夏草の類いで筆者の住んでいる地域では、7月はじめから目に付くようになり10月頃まで見かけます。草丈はばらつきがあり、高さ10cmほどで花穂を出しているものもあれば、70から80cmくらいに生長しているものも見かけます。低めの草丈で花穂を付けている株は可愛らしく感じます。
一番の注目ポイントは全体が毛で覆われたケムシのような姿の花穂です。花穂は握ると粒状の実がぽろぽろと落ちますが、毛は花穂にしっかりとくっついたまま残ります。
毛の色が紫色を帯びて花穂全体が紫色に見えるものはムラサキエノコロと呼ばれ、エノコログサの一品種として扱われています。
エノコログサの名前の由来は花穂の姿をイヌのしっぽに見立てたものです。漢字では「狗尾草」の字を当てます。「狗」は「犬」と同じ意味です。英語では「フォックステール・グラス」と呼ばれ、こちらはキツネのしっぽという意味です。イヌとキツネ、見立ては違えどもどちらも動物のしっぽという共通点がおもしろいですね。
見た目がエノコログサと似ているものに、アキノエノコログサがあります。こちらも道端などに生えるありふれたザッソウです。
アキノエノコログサは「秋に咲くエノコログサ」という意味ですが、早いときには7月ごろから見かけます。全体的に大形で花穂もエノコログサより長く、弧を描いてだらりと垂れ下がります。空き地などで盛大に茂っていることも多いです。以上、ネコジャラシことエノコログサのお話しでした。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)