ヤドリギは見た目も、その生き様も非常におもしろい植物です。見つけると何となくうれしくなります。まん丸な樹形が愛らしいからでしょうか? 見つけようと意識しなければ見つからない、そんな植物です。
筆者が住んでいる京都府では、絶滅危惧種に指定されています(京都府レッドデータブック 2015)。たしかに言われてみればどこででも見かけるというより、点々と狭い範囲でスポット的に分布している気がします。京都府下での全体的な数は少ないのかも知れません。 生えているところには生えており街中で見かけるケースも多い、そういった点では身近な植物ともいえます。
ヤドリギは他の樹木に寄生して栄養をもらい(奪い?)生長します。いろいろな樹木に寄生するようですが、筆者がよく見る宿主(しゅくしゅ・寄生されるほうの樹木)はエノキやサクラです。ヤドリギ自身も光合成を行うことができるので宿主にすべての栄養を依存しているわけではなく、扱いは半寄生のようです。
どうやって寄生するのか、かんたんに説明します。まず、ヤドリギの果実(冬に熟す)を食べた小鳥がタネを排出します。タネはゼリー状のねばねばしたものに覆われており、それが樹木の枝や幹にべちゃりとくっついて発芽します。粘着力は強く、ゼリー状の部分を指で触ると糸を引きながら伸びてなかなか切れません。発芽したタネはあたかも宿主と一体化するように、内部へと根を伸ばしていきます。
宿主はヤドリギから栄養などを奪われて弱り、最悪の場合枯れてしまわないのか心配になりますがどうなのでしょうか? たくさんのヤドリギが付いている木も見ますが、特に弱っている感じのものは見たことがないので大丈夫なのでしょう。
茎はしなやかで二股に枝分かれし、その先端に靴べらのような形の葉っぱがプロペラのように2枚付きます。全体的な色合いは鈍い緑色です。春になると葉の付け根にある芽が吹いて新たな葉を広げ、初夏に前年の葉が落ちます。株は球形に茂ります。春に小さくて目立たない花を咲かせます。雄花と雌花があり、それぞれ異なる株に咲きます。雌花はその後、果実を付けます。
観察には冬が適しています。というのも、宿主はたいがい落葉樹で冬に葉を落としています。すると枝に寄生したヤドリギが露わになり、形や様子がはっきり確認できるからです。春から秋は宿主の葉が大いに茂って邪魔をしてよく観察できませんし、発見するのもなかなか難しいです。興味のある方は探してみてください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)