めでたい、と言えば松竹梅!
今回は松竹梅のなかから「松(マツ)」の文様をご紹介させていただきます。
マツについて
マツの花言葉は不老長寿、永遠の若さ。これは、古来より仙人が松葉を不老長寿のために常用していたことや、民間療法でも松葉茶、松葉酒、松葉風呂が若さ保持に役立つとされているからだとか。そういえば、フラバンジェノールと呼ばれるランス南西部ランド地方に広がる海岸松の樹皮から抽出された天然由来のポリフェノールは、年齢に負けないためのサプリとしても知られています。
マツを図案化した松文
日本では、一年を通して葉が落ちないことから常盤草、常盤木と呼ばれ、縁起が良い植物とされています。そして、新年には年神様を家に迎えるための目印として門松を立てますが、このルーツは平安時代の貴族たちの遊びにあるようです。その遊びは、初の子の日に外出して小松(若松)を引き抜いて持ち帰り長寿の願いを託するというもので、これが変化したものが門松といわれています。現在でも関西地方では「根引きの松」と呼ばれ、お正月の縁起物として白い和紙で包み、根が付いたままの小松を玄関の両側に飾る習慣が残っています。
ちなみに、マツの語源は諸説あり、冬にも枯れない常緑で緑のまま霜や雪を「待つ」、依り代として神が下りてくるのを「待つ」など、この「待つ」が転じたという説がよく知られています。
ツルは千年ということで、この組み合わせは長寿の象徴に。
ご利益は立身出世、なぜ?
立身出世のご利益があるとされるのは、城に植えられていたからだとされています。しかし、これは観賞用だけでなく、敵に攻められて籠城戦になった際の備えとしての意味合いもあったようです。松の皮をむいた白い薄皮から松皮餅、松の実は非常食、さらに木材や松脂(まつやに・しょうし)は燃料として用いることがでたからだとされています。
マツ、タケ、ウメを取り合わせた松竹梅
マツ、タケ、ウメの三種の取り合わせは、元は中国の歳寒三友が日本に伝わったもの。これは、厳しい寒さのなかでも緑を保つマツとタケ、そして他の植物に先駆けて花開くウメは、高潔・節操・清純などの象徴として扱われたとされています。日本では奈良時代に伝わり、三種類の花木が新年の飾り物などに用いられたことから、室町時代には謡曲に、江戸時代には長唄をはじめとする祝儀曲などで唄われるようになり文様としても知られるようになったとされています。
(藤依里子 植物文様研究家/グリーンアドバイザー)