寒い日が続くと風景もモノトーンになりがち。そんな季節に街を歩くと、ふと目に入るサザンカのピンク色やヒイラギナンテンの黄色が鮮やかで目に沁みますね。
ツバキの花が散った道端は真っ赤な花弁が散らばって妙に生々しく、キレイを通り越してちょっと怖い。凄味すら漂います。一般的なヤブツバキは日本原産の樹木で、ほかに中国やベトナム原産のツバキの品種がありますが全体的にアジアの植物です。17世紀に日本から西洋にツバキが伝来すると、冬でも常緑で日陰でも花を咲かせる性質が好まれ大人気となりました。
日本原産のツバキの品種は白色から赤色までの花色ですが、大陸には黄色い花を咲かせるものもあります。黄色いツバキは1種だけではなく、実は約50種以上もあり中国からベトナムに分布しています。そのなかでも「黄色のツバキといえば!」という代表的なツバキを紹介しましょう。
金の花が咲くから金花茶(キンカチャ)という名のツバキは中国広西省に自生し、1965年に発表されました。発見された当時は非常に珍重され、しばらくは中国国内からの持ち出しが禁止されるほど。日本には1980年に渡来しました。
日本のツバキと明らかに違う点は、
- 葉っぱが細長くボディビルダーの腹筋のように葉脈がはっきりしている
- 花弁が肉厚で日本の花よりもさらにぽってりとまるで蝋細工のようである
- 耐寒性がないので日本の冬越しは屋内
眩(まばゆ)い黄色の花がどっしりと咲く様子は、中国の皇帝のみが着衣を許された黄色の絹の衣装のようでもあり圧巻。日本人には見慣れたツバキの花も色が変わるだけでこんなにもエキゾチックに感じるものです。
日本国内では、富山県の婦中町(ふちゅうまち)にある富山県中央植物園に中国雲南省の植物を展示した雲南温室があり、さまざまなツバキの品種が豊富に展示されています。現在では日本のツバキと交配させてさらに黄色の強い品種の育成が進められており、大型の園芸店などでも販売されているのを見かけることがあります。赤いツバキに飽きたら、ちょっと変わったツバキの栽培はいかがでしょう。
(宮内元子)