ママコノシリヌグイ……。名前に不穏なものを感じる方も多いでしょうが、まずどんな植物なのかかんたんに説明します。
やや湿り気のある場所を好むザッソウで、竹藪の縁や川に沿った遊歩道の端などで見かけることが多いです。観察できる時期は春~秋です。
さて、奇妙な名前についてお話しします。漢字を当てると「継子の尻拭」で、「逆向きのトゲのある茎葉で継子の尻をぬぐう」という恐ろしい意味です。継子と実子の扱いの差を表しているのでしょうが、かなりネガティブな名前です。茎や葉に生えたトゲが痛そうなので(実際、痛い)この名前が付けられました。
トゲソバという別名がありますが、コレはトゲの生えたソバというそのままの意味です(ソバも同じタデ科の植物、属は異なります)。ヘクソカズラやハキダメギクのように、ひどい名前の植物はいろいろありますが、由来のひどさはママコノシリヌグイが群を抜いています。
葉や茎に生える逆向きのトゲをほかの植物やフェンスに引っ掛けて上へ上へと伸び、高さ1mに達します。このトゲ、小さい割には鋭く凶暴で、繁茂している場所に踏み込むとズボンが擦り傷だらけになるでしょう。
葉は特徴のある尖った三角形で、葉の付け根に付く托葉は円形です。葉のトゲは裏側の主脈上に付き、表側には付きません。あと、葉柄(葉の軸部分)にもトゲが生えます。
花は下部が白で先端がピンク色になります。花びらのように見えている部分は萼(がく)です。この萼は開花後も色あせず、タネを包みこむように残ります。萼に包まれた果実はパッと見でつぼみとの区別がつきにくいです。つぼみや果実が集まっているさまは、コンペイトウのような愛らしさがあります。かわいらしい花に目を惹かれ茎葉に触れてちくりとやられたときは、だまされた感がありました。
近い仲間のミゾソバは花がそっくりで、生える環境や花の咲く時期も似通っていますが、葉の形でまったく違うので、かんたんに区別できます。ミゾソバの葉は正面から見たウシの顔のようなおもしろい形をしています。そこからウシノヒタイの別名が付きました。こちらの紹介はまたの機会に。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)