今回は秋の味覚を代表する「コクワ」を紹介します。標準和名は「サルナシ」、別名は「シラクチヅル」「シラクチカヅラ」で、山梨県では「サルナシ」と呼びます。
マタタビ科マタタビ属の大型の落葉性藤本で、樹木や岩に絡んで延びます。北海道から九州まで、全国の低山地の林内などにふつうに生えます。
西沢渓谷のロード沿いのものは幹の径5cm以下、総延長15m以下のものが多いですが、最も大型のものでは、幹径10~15cm、総延長50mにも達するといわれています。写真のように蔓の途中から2~8cmに伸びた葉柄の先に、長さ6~10cm、幅4~7cmの楕円形から広楕円形の厚くて硬い草質の葉を付けます。葉は黄葉した後、落ちます。
花期は5~7月(西沢渓谷では6~7月)で、若枝の上方の葉腋から出て、径1~1.5cmの白色の花が集散状に付きます。(下の写真は同じ仲間のマタタビの花ですが、これと似ています。)
「マタタビ」の花は「サルナシ=コクワ」の倍の大きさで、葉もひと回り大きいという違いがあります。また「サルナシ=コクワ」の蔓は丈夫なことから、四国・徳島にある有名な『かずら橋(葛類を使って架けられた吊り橋)』に使われています。また、水分を吸い上げる能力が高く、多くの樹液を含んでいます。
コクワの実は、熊や猿などの哺乳動物や野鳥などが好んで食べます。中学~高校のころ、秋になると「ヤマブドウ」と「コクワ」狩りに山に出かけましたが、各人ラジオの音量を最大にし(北海道だったのでヒグマにビクビクしながら)、大急ぎで採取籠をいっぱいにしたことを思い出します。その時期は熊と遭遇する危険性が高いので、未だ熟しきれていない実が硬いうちから採ってきて、米櫃に付けておくようにしました(熟すのを早める効果があったのでしょうか)。北海道もご多分に漏れず開発などで自然の森が減少しており、「コクワ」の自生範囲が減少して採取量も年々減少しているようです。豊かな自然は、そのまま後世に残しておきたいですね!
西沢渓谷で月輪熊に出くわしたことはありませんが、日本猿がいるので競争になります。たまたま猿が見逃した「コクワ」を見つけたときは、必ず森林セラピーのお客様に味わっていただくようにしています。お客様の反応は“初めて食べたけど美味しい!” “キウイと同じ味”などです。
その気にならないと見つけるのはなかなかに難しいでしょうが、貴重な自然の恵みを探すという楽しみでもありますよ!
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))