スベリヒユは日本全国に分布するザッソウです。畑地やプランターの中、空き地や公園、道端にも生えています。気温の高い夏から秋に見ることができます。
葉っぱは丸みのあるへら型、肉厚で表面に光沢があります。茎も内部にたっぷり水分を貯めている感じの多汁質で、立ち上がらず地面を這うように伸びていきます。
花は7〜8mmほどの黄色で、午前中に咲いて午後にはしぼみます。茎が立ち上がるように茂るタイプはタチスベリヒユと呼ばれ、スベリヒユの変種に分類されます。
花後にできる先が尖った球形の果実は、熟すと上半分がフタのようにパカリと外れ、中から細かいタネがこぼれ出ます。まるでカプセルのようです。
近い仲間にハナスベリヒユ(ポーチュラカとも呼ばれます)やマツバボタンがあり、どちらも夏に咲く草花として広く親しまれています。ハナスベリヒユは葉っぱや草姿がスベリヒユにとても似ています。花の咲いていないときは見分けがつきにくいです。
一説によると、スベリヒユやタチスベリヒユが変異したものがハナスベリヒユとされています。この説を採るなら、ソックリなのもうなずけます。マツバボタンは名の示すとおり松葉をイメージさせるような、細長い葉をもち、スベリヒユとはかんたんに見分けがつきます。
以前、庭のプランターにスベリヒユが生えているのを発見したとき「ハナスベリヒユが生えてきた、ラッキー!」と勘違いして大切に育てたことがあります(当時はスベリヒユを知らなかったのです)。このときは残念ながら花が咲かずに枯れてしまいました。後日、スベリヒユの存在を知って「もしかしたらこっち(スベリヒユ)だったのかな?」と、なんとなく納得しました。
スベリヒユとハナスベリヒユについては、園芸家の柳宗民(やなぎむねたみ)さんも同じような経験を著書で綴っておられます。あるあるネタなのかもしれません。ハナスベリヒユを植えた花壇にスベリヒユが生えてきたそうです。生存競争ではハナスベリヒユが不利なのでスベリヒユを抜こうとしたのですが、花が咲く前だったのでどっちがどっちか判断できずに困った、のだそうです。「私ですら、ハナスベリヒユを抜いてスベリヒユを残してしまうことがある。嗚呼……。」(「」内、柳宗民の雑草ノオト:ちくま学芸文庫より引用)と嘆いておられます。実感がこもっています。
スベリヒユは食べられるザッソウです。食材として親しんでいる地域もあるので、ザッソウという呼び方は失礼でしょうか? スベリヒユの学名はポーチュラカ・オレラセア(Portulaca oleracea)といいます。オレラセアは「野菜として利用される」という意味なので、野菜扱いでもおかしくはないかもしれません。ただ、あまりにも身近な場所で勝手に繁茂しているので野菜とは考えにくいのでしょう。
さっと塩ゆでしたのち、味付け・調理して、和え物、味噌汁、天ぷらなどにするようです。筆者は経験がありませんが、酸味とぬるぬるした食感が特長なのだとか。庭にたくさん生えてきたら、一度は食してみたいものです。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)