今回は実生(みしょう)の楽しさについてお話しします。実生とは、タネから植物を育てることです。また、タネから育てた植物を指すこともあります。例えば、「実生のシクラメン」というと、「タネから育てたシクラメンの株」ということになります。
実生の魅力
実生の魅力は、一から植物を育てるところにあります。発芽して、成長して苗になり、そして、つぼみができて開花した時の感動は、ちょっと他では味わえません。それまでの苦労が報われる時です。小さな一粒のタネが、大きな株に成長する過程も、「不思議だなあ」という気持ちになります。
芽を出したばかりの小さな苗は、当然ですが成長した株とは見た目が全然違います。そんな小さな苗を観察できるのも、実生の魅力かもしれません。
自分でタネを採る
自家採種による実生も楽しいです。わかりやすくいうと、タネを自分で採ってまくことです。市販されていない植物のタネも、自家採種で手に入れて楽しむことができます。
私は庭の植物が実を結んだら、とりあえず採種して貯蔵するクセが付いてしまいました。ビオラ、パンジー、クリスマスローズなどは毎年タネを採ります。そして播ききれません……。フルーツなどを食べた後に残ったタネをまくのも、おもしろいでしょう。これだって自家採種の実生です。
個体差を楽しむ
同じ親から採取したタネでも、花色などの異なる子どもが出てきます。大幅に違うものが出てくることはなく、微妙に花色が違う株が出てくる程度です。些細なことですが、そのちょっとの差がおもしろかったりします。
育ってみないと、どんな株になるかわからないところも、実に楽しいです。咲く花や実る果実を想像しながらの栽培は至福です。
私はこれらのことを「個体差を楽しむ」と言っています。市販のタネのように品質が均一ではありません。むしろそこが自家採種の魅力です。
過程も楽しめる園芸
タネから育てると、開花や結実など結果が出るまで時間がかかります。いくら待っても発芽しないこともあれば、育苗途中でダメにしてしまうことも多々あります。しかし、家庭園芸は結果だけでなく育てる過程も楽しめるものだと思います。
実生だけではなく、良かったときもダメだったときも、同じように楽しめる園芸であってほしいなと思います。
さいごに
さらに実生について知りたい方は、「捨てるな、うまいタネNEO(藤田雅矢著/WAVE出版)」をお勧めします。自家採種、実生やタネまきについて、わかりやすく説明された書籍です。
興味のある方は、この本を読んで、ぜひ実生に挑戦してみてください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
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