神社やお寺をはじめ、場所によってはシンボルツリーのひとつとして日本各地には、願いを叶えてくれる、パワーがもらえるとされているご神木と呼ばれている木が数多く存在しています。これは、運気、邪気、勇気、弱気、強気などの“気”と“木(樹)”を語呂合わせや、願いを叶える力もあるからでしょう。特に、大樹や古木には、木霊と呼ばれる精霊が宿り、不思議な力を持つともいわれています。今回はご神木も紹介しつつ、お酉さまでしか買うことできない縁起菓子“切山椒”をご紹介します。
お酉様って、植物とは無関係?!
「な、なぜ植物のサイトにお酉様……、ご神木ならわかるけど、なんでやねん」。
そんな風に思われる方もいらっしゃるでしょう。でも、ちょっと考えみてください。実は、お祭りの多くは五穀豊穣を神様にお願いしたり、「こんなにたくさんの恵みをありがとう!」と神様へ感謝したりするためのもの。そのため、祭りなどで目にする神輿に飾られている鳳凰の嘴(くちばし)には稲穂が添えられていることも少なくないのです。
ちなみに、江戸時代から知られるお酉様(酉の市)は、鷲宮(わしのみや)神社(埼玉県)の酉の日信仰から始まり、鷲神社(東京都)では実際にニワトリを献じて開運を祈ったという歴史も……。
そして、このお酉様を全国的に有名にしたのが、浅草の鷲神社。お酉様の様子は、歌川国貞(3世豊国)『一陽来復酉の市』の浮世絵には、五穀豊穣はもちろん、開運、商売繁盛を願う役者や商人などが、縁起物の桝(ます)、小判、おかめの面などのついた熊手を求める様子が描かれています。
ちなみに、あの熊手は、農具のひとつ。今では、財運、開運を引き寄せるとしお酉さまの必須アイテムになっていますが、本来は、魂をかきよせるという神様につながる意味もあったと考えることもできるようです。さらに、場所によっては、日本武尊(やまとたけるのみこと)とのつながりから八頭などが供え物にされたり、粟から作られる黄金餅(粟餅)が土産物として売られたりするようになったともいわれています。
そして、そんな土産物のひとつが、今回ご紹介する切山椒。なんと、サンショウが使われています。
お酉様と切山椒
この切山椒は、江戸時代からあるモチ菓子のひとつ。あの茶人小堀遠州好みも好んだといいます。新年の菓子としても知られていますが、都内ではお酉様のときにしか見ることができない特別なものになっています。
でも、切山椒大好きというならちょっとネットで検索を!
なんと、山梨県では有名な郷土菓子にひとつ。短冊で拍子木型なのは、火の用心の想いが込められているとのこと。また、名前の通りサンショウが使われているのは、捨てる部分がないサンショウをお菓子に使うことで切り回しが良く、物事を巧みにこなせるようにといった願いが込められているから……。そして、厄除けにも効果あるといわれています。
その理由はということで、少しサンショウについて紹介しましょう(やっと植物のお話になりました!)。
山椒について
サンショウは独得の香りが知られ、漢方薬としても重宝された植物のひとつ。その成分は、胃腸や血流良くし、冷えの改善にもなるとされていました。また、ピリッとからいサンショウの実には、植物繊維はもちろんマグネウムを始めとするミネラルなどの栄養素も豊富。そのため、冬に積極的にサンショウを利用することで、冷え予防につながり、さまざまな病が“厄”とされていた昔は、サンショウを食べる事が厄払いになったと考えられたのではないでしょうか。
もちろん、切山椒を食べるだけでなく、冬こそ食卓にサンショウを上手に使うことで健康維持にも役立ちそうですね。そういえば、お正月のお屠蘇の中にもサンショウが使われていますね。
お酉様で有名なあの花園神社のご神木はイチョウ!
ちなみに今回筆者は二の酉にお酉様の梯子(はしご)を。都内でのお酉様でもその賑わいがひときわ大きい新宿区の花園神社で切山椒が販売されていました。御参り後、社務所に立ち寄りご神木を伺ったところ「今日はわかりにくいですが、お手洗い近くに注連縄をしたイチョウがご神木です」と教えてくださいました。なんでも、ご神木に手を添えるとご神木のパワーをいただくことができるのだとか。
また、もうひとつ足を伸ばした豊島区雑司ヶ谷の大鳥神社ではこのお酉様の日には稲穂のついたミニ熊手が売られ、筆者も来年の仕事とよいご縁をかっこむためにひとつ購入。今年は三の酉まであり! まだ、という方はぜひ出かけてみてはいかがでしょうか。
(写真・取材/グリーンアドバイザー・開運文様研究家 ふじえりこ)
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