2022年11月8日の月食はご覧になりましたか? 同じ時間に同じ空を見上げて月が欠けていくのを見るだけで盛り上がれるなんて「なんて平和なことだろう」と、月を愛でながらしみじみと感じました。
お花見も紅葉も同じく楽しむとき、人は人を見ずにただ花や木々を見ては穏やかな思いを口にします。こんな時間が四季を通じてたくさん増えると良いなと願ってやみません。今回は学名のなかに「星のような」という意味の言葉が入っているアマリリスの中でも秋に開花する種類を紹介します。
アマリリスと聞くと春先に大きな球根から太い花茎をのばし迫力のある花を咲かせる姿を思い浮かべる方が多いことでしょう。多くの品種が春に開花するタイプですが、今回のように秋咲きのタイプもあります。原種のシロスジアマリリスはブラジル原産の球根植物で葉の中央を刷毛で一筋白色を塗り付けたように白い筋があるのと、ピンク色の花にも細く網目模様が入るのが名前の由来です。
晩春から初夏まで休眠し、夏になると太い葉を出し始めます。9月から10月にかけて花茎をのばし先端に3から6個程度の蕾をつけます。大きなラッパ型の花が開花するのは夏から秋にかけてなのですが、日本列島では時期にばらつきがあります。11月中旬現在、茨城県水戸の植物園では9月中旬から開花し始めたシロスジアマリリスがまだ元気に咲いています。
しかし耐寒性はあまり強くないので霜が降りる地域では葉を茂らせたまま掘り上げて冬越しさせるつもりで植え付けてください。耐暑性はありますが日本のジメジメとしつこい雨は球根が痛む原因になるので、水はけのよい土に植え付けしたり長雨のかからない場所を選ぶとよいでしょう。
葉が茂っている時期はしっかり日光をあてて、施肥をおこなうと花上りがよく球根も充実して翌年もしっかり楽しめる株になります。手間いらずで晩秋までしっかり開花する花の存在はうれしいものです。春咲きとはひと味違う白い筋が清々しいアマリリスをお楽しみください。
(水戸市植物公園 宮内元子)