「モンステラ」という観葉植物をご存じでしょうか? 学名は“Monstera”と書きます。これはラテン語で「奇怪」とか「異常」を意味する「monstrum」からきており、英語の怪物を意味する「monster」の語源にもなっています。
深い切れ込みや穴の開いた葉の異様さからつけられた名前といえるでしょう。
日本名はマドカズラやメガネカズラといい、葉に開いた穴を窓や眼鏡に見立てています。
モンステラは熱帯アメリカ原産の蔓性もしくは半蔓性の植物で、茎から気根を垂らしながらほかのものに付着して伸びていきます。日本では、ヘゴ板や支柱に這わせながら植木鉢の中で育て葉を楽しむ観葉植物ですが、自然のまま管理すると大きく伸びて高さ7~10mに達することもあります。渋谷区ふれあい植物センターでは地植えにしてありますが、あっという間に伸びて天井まで到達してしまい、今にも温室のガラスの隙間から脱走しそうです。
サトイモ科の植物の花は、仏炎苞(ぶつえんほう)という葉の一部がトウモロコシに似た棍棒のような形の肉穂花序(にくすいかじょ)の花を包むように咲くのが特徴です。
肉穂花序は、肥大した太い花軸の表面に多数の小さな花が集合しているのが特徴で、受粉すると粒々一つずつが果実として実ります。モンステラも、大きく生長すると花と果実を付けるようになります。この果実が食用となるのです。
モンステラの果実が熟すと、パイナップルに似た甘さの中に酸味の効いた爽やかな香りが漂います。果肉は、トウモロコシの実が芯からポロポロ剥がれるように取れていきます。自然に剥がれるのが完熟の印なのですが、完熟するまでに必要な時間は、なんと樹上12か月から14か月!
味はバナナとパイナップルを混ぜたような甘味で、繊維質も邪魔にならず美味しく食べられます。しかし呑み込んだ後しばらくすると、舌や喉の奥がピリピリと痺れるような刺激を感じ始めます。これは、果実に蓚酸塩(しゅうさんえん)という針状の結晶が含まれているからです。美味しいからといって食べ過ぎると、舌や喉がただれるかもしれないので要注意です。
小さい鉢植えで栽培するとなかなか花は開花しませんが、大きな株を5~10年かけて栽培すれば機会があるかもしれません。開花したらすぐに切り取らず、ぜひ1年かけて果実を熟させてみましょう。
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