今年の米は不作らしいです。なぜかというと、8月の日照不足と低温により、米が実りにくく、収穫が遅れているからです。収穫量の減少と品質の低下は、米の値上がりにつながります。困りますね。今年は8月に留まらず、10月にも長雨は続きました。これがさまざまな場所で米の収穫に影響を及ぼしているのです。
雨が降るとなぜ困るのか。花農家の場合で説明しましょう。
私が働く高橋植物園では、8月から9月にかけてパンジーとビオラの苗を定植しています。小さな苗から丈夫で品質のよい苗に育てるのに一番大切なのが日光です。雨が続くと、苗に水をやっても土が乾きません。土が乾かないと、新たに水をやることができないため、苗は十分な養分を吸収できず、軟弱になってしまいます。日光によって土が乾けば、液肥を混ぜた水やりの回数も増え、丈夫な苗に育つのですが、土が乾かない状態で水やりをすると、苗が腐ってしまうのです。また、雨が続くとさまざまな病原菌も発生しやすくなります。
また、せっかく順調に育てて出荷を待つばかりの状態になっても、長雨により市場が停滞し、出荷しても相場が下がることを恐れて、出荷するかどうかの判断を迫られます。それではなぜ相場が下がるのでしょうか。それは、雨が続くと消費者が苗を植えることができないからです。
さらに日照不足は、出荷時期を迎えている苗のつぼみがなかなか咲かないばかりか、花芽分化(植物が生長し、花になるための芽を作ること)も遅れてしまいます。そしてそのことが12月に出荷を迎えるはずの、今はまだ小さな苗の需要にも大きな影響を及ぼすことになるのです。
お歳暮シーズンやクリスマス、お正月に出荷を目指して植え付けた苗の花が咲くのが遅れることで、出荷も遅れてしまうのです。その結果として、需要期に市場に出回る花が不足し、花の価格が高騰、需要期を過ぎてから大量に出荷することになり、花の価格が暴落するという需給バランスの崩れを生むのです。
今年は長雨の影響で、10月は運動会の中止などで散々でした。今、出荷を待つ苗のためにも、11月はお天気に恵まれるといいなあと切に願っています。
(高橋植物園 高橋さやか)
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