山口県防府市で藍の栽培から天然のすくも作り、そして、藍染め体験を行っている富海藍作研究会を見学し、お話を伺ってきました。
前回、の記事はこちら。 https://love-evergreen.com/evergreenpost/post/5310
お話していただいたのは住岡修さん。防府市の地域おこし協力隊として藍の栽培から藍染め液を作り、藍染め体験のワークショップも開催されています。
藍の栽培について
「蓼藍の種まきは3月に行います。苗を育てて、5月に畑に定植します。藍は肥料がたくさん必要なので、鶏糞や牛糞堆肥のほか、化学肥料も使います。栽培中は、土寄(根の近くに土をかぶせる)、追肥、除草、散水(雨が少ない時)を適宜行います。虫による食害もありますので、やむをえず農薬散布を行うこともあります。収穫は2段階。7月に10cmぐらいを残して刈り、9月にまた刈ります。このころには50cm~60cmくらいの大きさになっています。それ以降は、タネをとるための藍を残しておきます。」(住岡さん)
すくも作り
「刈り取った藍は、葉のみを染料に使うために茎と分別したのち乾燥して冬まで保管しておきます。冬の間に発酵させて『すくも』作りを行ないます。葉に水を打つと発酵が始まります。週に1回水をうち、酸素を与えるための撹拌という作業を3ヵ月くらいかけて行います。発酵の温度は70度くらいです」(住岡さん)
冬にすくも作りを行ったら、「お部屋の中はメチャクチャ暖かいのでは?」という純粋な疑問がわきました。そこで、「暖房の代わりなる?」と質問してみました。
「発酵させるときは、独特のアンモニア臭がするので『メチャクチャくさい』ですよ」(住岡さん)
そう都合よく暖房代わりにとはいかないようでした。残念!
そしてこの工程で、発酵したものを乾燥させると「すくも」という染料になります。
藍染め液作りと藍染め体験
「藍染め液を作るには、大きな瓶にすくもをアルカリ性の環境を作る灰汁(あく)に溶いて入れて、再び発酵させます。適宜、灰汁や石灰でpHを調整したり、ふすま(小麦の外皮で発酵のための栄養源)を与えたりします。次第にすくも中のインディゴが水に溶け出し、一週間ほどで染色が可能になります」(住岡さん)
藍染め染料作りをするのに、発酵のためのゴハン(栄養源)としてふすまをあげるというお話を聞いて、まるでペットを育て飼っているようだなと感じました。
発酵を促すのにお酒を使うというぜいたくな藍。そして、原料となる樫の灰汁はなかなか手に入らず、天然藍染め液を作るのはコストがかかるのも事実。コストと手間をかけても、続けていく人たちによってこの文化が継承されることは、本当にすばらしいと思います。
発酵している藍染め液からは、なんとなく動物っぽい匂いがします。
ちょっと神聖な雰囲気。思わず拝みたくなりました。
前回、藍染めしたシャツを着て、ハンカチや持参した服などを染めまくりました。濃い色に染めるには、何度も藍染め液にくぐらせて空気に触れさせる作業を繰り返すため、なかなかの重労働です。
ここで染めた木綿のハンカチは、こんな感じに仕上がりました!
右側は、空のような模様に。左側は、羽を広げたフクロウのような模様になりました。
藍染めの歴史
江戸時代に阿波徳島で発展した藍染めは今も有名ですが、山口県萩市でも江戸時代の中ごろ、木綿の栽培と利用が盛んになるにつれ、染料としての利用が急増しました。藍は、染めた糸や布を丈夫にし、虫を防ぐ作用や、菌や臭いをおさえる作用があるとされています。野外の作業着などに好んで用いられました。
(山口県萩市の萩博物館「NPO萩まちじゅう博物館 あい班」展示より)
「かつて、山口県防府市の宿場町には紺屋(こんや)と呼ばれる染物屋さんがたくさんありました」(住岡さん)
また、私が暮らす山口県萩市でも、あちらこちらで藍が栽培されており、今も観光名所としなっている「藍場川」は、江戸中期に人工的に作られた溝川なのですが、その名前の由来は、藍を生産する「藍場」が川沿いにあったからだそうです。
かつて、「藍染め」がいかに身近で重要なものだったかがわかります。
最後に、何度か藍染めや草木染めを体験してみて言えることは、自分で染めた布って、とっても愛着がわくのです。大事に長く使おうという気持ちになります。その気持ちはゴミを減らし、環境保護へとつながります。
ファストファッションが全盛の今だからこそ、ぜひ、多くの人にこの気持ちを伝えたいと感じました。
(田舎暮らし イシダヨウコ)
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