「草木花 × 花と緑で街をデザイン」〜グリーンアドバイザー東京会長/公園プロデューサー 小口健蔵さん|エバーグリーン

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グリーンアドバイザー」とは、公益社団法人日本家庭園芸普及協会の認定資格。「植物の育て方についての正しい知識や、園芸・ガーデニングの魅力や楽しさを伝えることのできる人に与えられる称号です」(グリーンアドバイザーHPより/公益社団法人 日本家庭園芸普及協会)。先日行われた第29回認定試験には、910名の方が挑戦したといいます(合格率82.4%)。

今回は、グリーンアドバイザー東京の会長で、公園プロデューサーとして活躍されている小口健蔵さんに、グリーンアドバイザーの資格やその活動についてお話を伺いました。

グリーンアドバイザー東京会長の小口健蔵さん

グリーンアドバイザー東京会長の小口健蔵さん

グリーンアドバイザーになったきっかけ

平成元(1989)年から平成5(1993)年まで私は東京・台東区役所の公園課長でした。それ以前も、都庁で公園を造ったり、都市の緑を増やしたりなどを専門に担当する造園職として仕事をしていました。ご存じのとおり、台東区は、上野や浅草で知られるいわゆる下町です。東京の郊外のように緑は多くありません。入谷の朝顔まつり浅草のほおずき市お富士さんの植木市など、伝統的な行事も愛されていて、狭い場所に工夫して緑や花を皆さん育てているのですが、緑が少ないのを何とかしたいと考えていました。街の建て替えも進みますます緑が減少するなか、通りを花で飾ったり、緑化に関心を持つ人がもっと増えたりしてほしいと考えていました。

浅草ほおずき市

浅草ほおずき市

 

そんな時、グリーンアドバイザーの認定試験制度が始まりました。公園課の職員に、「みんなで資格を取ろう」と声をかけました。一緒に受験した3人全員が合格し、区民の皆さんに、自信をもって「花や緑で、もっと街をきれいにしたり、明るくしたりする取り組みをしましょう」と働きかけられるようになりました。

 

グリーンアドバイザーの資格と役割とは?

どんな資格でもそうでしょうが、資格を取ったからといって、すぐ仕事ができるわけではないと思います。資格を取るメリットは、

  1. 資格取得に向けて地道に勉強することで必要な知識を得ることができます。
  2. 資格を得たあと、グリーンアドバイザーの会に加入することで同じ志を持つ人々との人脈が広がります。
  3. みどりの専門家である「グリーンアドバイザー」だと名乗ることで自信にもつながり、仕事を依頼されるチャンスが増えます。

でも、これらは、本人が努力をすることで実現できることです。

グリーンアドバイザー試験に合格するためには、植物を好きになること。その後、受験テキストに沿って系統立てて勉強することと教えてくれました。

グリーンアドバイザー試験に合格するためには、植物を好きになること。その後、受験テキストに沿って系統立てて勉強することと教えてくれました。

 

「グリーンアドバイザー」という資格ができてから、もう20年以上経ちます。どのような人が資格をとっているかというと、花や緑の生産者、園芸会社や造園会社に勤務している人、ランドスケープの設計にかかわっている人、緑関係の行政の仕事をしている人、花や緑を趣味としている人、園芸店やホームセンターなどで仕入れや販売に従事している人、ハンギングバスケットマスターなどの資格を持っている人など様々な分野に渡っています。

グリーンアドバイザーの役割は、私は三つあると考えています。

  1. 正しい知識や技術を伝える緑の専門家であること
  2. 花と緑で街を飾ることの専門家としての役割
  3. 花と緑のまちづくりのリーダーであること

この三つの役割の中で、ことに重要なのは2と3です。正しい知識や技術を伝えることはインターネットの時代ですので、このサイトを含めいろいろなところから学ぶことができます。実際の街のなかで花と緑のまちづくりを進めるためには、人の力が鍵を握っています。ボランティアを組織することも重要になります。

グリーンアドバイザーとして活躍する人は、子育てなどが一段落し比較的自由に時間が取れる女性などが中心になっています。花や緑が大好きで、街の緑化をもっと進めたいと考えている方が多く、ハンギングバスケットマスターコンテナガーデンマスターの資格も取得し、『植栽や花飾りは得意です!』とアピールして団地や公園のコミュニティガーデンづくりの仕事を受注したり、園芸教室を主宰したり、講座の講師になったり、ガーデンデザインを仕事にしたり、ボランティア団体を主宰したりと様々な活動をしています。

 

レストランを花で飾って客を増やす(GA東京の活動1)

活動の一つとして、日比谷公園のなかある松本楼というレストランで、チームを組んで、テラスを花で飾ったり、花壇やハンギングバスケットを作ったりしています。10年ほど前にニューヨークのセントラルパークのど真ん中ある「ターバン・オン・ザ・グリーン」というレストランに行ったんです。とても素敵なところで、あちこちに根付きの花が飾られているんです。それを見て、東京のセントラルパークともいえる日比谷公園にある松本楼さんが花のレストランになったらどんなに素晴らしいかと考え「レストランを花で飾ることで、お客様を増やしましょう」と仲間と営業に行きました。

松本楼のエントランス

松本楼のエントランス

もうすぐハロウィン

もうすぐハロウィン

窓辺を飾る花たち

窓辺を飾る花たち

 

今でも継続していて、年3回は植え替えもしていますし、チームを組んで毎週メンテナンスしています。公園のなかにあってなかなかいい雰囲気を出せていると思います。この花飾りが今も続いているということは、花と緑がお客様を集める効果があると認めてくださっているからでしょうね。

 

たくさんの人が公園に遊びに来るきっかけ作り(GA東京の活動2)

また、公共の公園に、できるだけ花や緑を活かしたきれいな景色を使って、「この公園は素敵だから」とたくさんの人が公園に遊びに来るきっかけを作りたいと考えています。なかなか予算をとるのは難しいようですが、そんなにお金をかけなくても、美しい空間はできますし、それによって人を集めることができます。「私たちの技術でもっといい公園にしたいんですけどどうですか?」と、提案・営業したのが新宿中央公園です。

近くの子ども園の園児と一緒にたねダンゴを撒くところから始めました

近くの子ども園の園児と一緒にたねダンゴを撒くところから始めました

春に撒いたたねダンゴが美しいダリアを咲かせました(8月29日取材時)

春に撒いたたねダンゴが美しいヒャクニチソウを咲かせました(8月29日取材時)

 

そんななか大事だと思っているのは、「自らが提案を考えて、営業もし、仕入れもし、作業人数を把握して、従事者みんなが楽しかったという一連の流れをリーダーシップをもってできる人をもっと増やす」ことです。

われわれに依頼がある仕事は、ボランティア的なものからビジネスとして取り組むものまで多岐にわたっています。依頼が相手から直接いただいたり、自分たちで営業したりで、仕事の範囲が広がっています。こうしたことに取り組むことで、どう説明したら依頼していただけるかが身に付き、グリーンアドバイザー個人として仕事を受注するための経験を積むことができます。

新宿中央公園の一画にハンギングバスケットを飾りました

新宿中央公園の一画にハンギングバスケットを飾りました

 

新宿中央公園も、自分たちができることのなかで、もうちょっとこの分野を膨らませてみようかという話から始まったプロジェクトです。

 

グリーンアドバイザーの資格取得がもたらしたもの

先ほどもお話ししましたが、台東区役所に勤務していたときは、花壇を作ろうと思っても土地がなかったわけです。ちょうどあるグリーンアドバイザーのお一人がハンギングバスケットの普及活動をされていることを知り、これなら台東区をもっときれいな街にできるかもしれないと考えたんです。

その後、私自身が転勤で多摩ニュータウンの仕事をすることになり、京王線の南大沢駅前を花と緑で活性化しようという話になりました。ハンギングバスケットマスターの資格試験の実技試験に出品された作品を、南大沢駅から首都大学東京へ続くアーケードに展示することを提案し、実現しました。今もそれは続いています。南大沢は、10月15日まで開催されている緑化フェアのサブ会場にもなります。日本中からたくさんの人が南大沢に集まって来てくれるなんて、本当にうれしいですね。

南大沢駅から首都大学東京へ続くアーケードに飾られたハンギングバスケット

南大沢駅から首都大学東京へ続くアーケードに飾られたハンギングバスケット

たくさんの人が日本中から南大沢に

たくさんの人が日本中から南大沢に

 

グリーンアドバイザーという資格を取得したことで、普通だったらなかなか知り合えないような人たちと出会い、コミュニケ-ションをとって、さまざまな成果を出すことができるようになったんですよ。すごいと思いませんか?

 

  • 小口健蔵さんプロフィール

公園プロデューサー、小口健蔵オフィス代表、高知県牧野記念財団評議員、名古屋市公園経営アドバイザー、公園管理運営士会理事・関東支部部長、GA東京会長、World Urban Parks Inc.初代理事。
ホームページ: http://park-management.seesaa.net


グリーンアドバイザー東京会長の小口健蔵さん