コニシキソウは夏の路傍で見かけるいわゆるザッソウです。道路や空き地のほか、畑や花壇、鉢、プランターの中にも生えてくるので、園芸をしているとよく出合います。故郷は北アメリカで、日本には明治中期に入ってきたとされます。
今回は、炎天下に育つコニシキソウとその仲間についてお話しします。
名前の由来
近い仲間のニシキソウに比べると小型なので、「小さいニシキソウ」という意味で、コニシキソウと名付けられたとされます。実際に両方を見比べてみると、大きさにさほどの差は感じません。ニシキソウは「錦草」の字を当て、赤い茎と緑の葉の色合いが美しい様を「錦」に例えたものです。錦鯉や錦絵と言葉の用い方は同じです。それを知ったうえで観察すると、美しく見えてくるので不思議です。
こんな姿
葉っぱは小さな楕円形で、真ん中に暗紫色の斑紋があることが多いのが特徴です。なかには、斑紋が薄くてはっきりしないものやないものも見られます。
また、茎が横に這って地面にへばりつくように生えていることも多いようです。その草姿は、あまり立体感を感じさせません。茎が立ち上がる個体もときおり見かけます。野草の場合、草姿や大きさの個体差は大きいといえるでしょう。
茎や葉を切ると、断面から乳白色の汁が出ます。汁が皮膚に付くと炎症を起こすこともあるようので(私は大丈夫だったのでよくわかりませんが)、扱いには注意が必要です。
引っこ抜くと広い範囲に張っている茎葉がずるっとそっくり付いてくるので、一株抜くだけで、たくさん除草できたような感覚になって気持ちいいです。
特徴的な花
コニシキソウは、葉っぱのつけ根に目立たない花を咲かせます。しかも小さいので咲いていてもなかなか気づきません。
花のつくりが面白いので、ここで少し紹介します。
花は白い花びらのような付属体と虫を誘う蜜を出す腺体、子房、雄しべ、雌しべで構成されています。雌しべが受粉すると、下部の子房がふくらんで果実となり、タネを結びます。「杯状花序(はいじょうかじょ)」と呼ばれるつくりの花で、トウダイグサ科によく見られます。
主に受粉を手伝う虫はアリです。地面にへばりつくような草姿は、アリが花を見つけやすくするためなのかもしれません。
近い仲間と区別するには
近い仲間で同じ時期に見られるものに、ニシキソウやオオニシキソウがあります。
- オオニシキソウ
オオニシキソウは茎が直立して草丈や葉が大ぶりで、花びらのような付属体も大きく目立ちます。草姿がかなり異なるので、見分けやすいと思います。
- ニシキソウ
葉に模様があるかないかで、ある程度判別できます。前述のようにコニシキソウは葉に紫色の模様が入ることが多いです。まれに模様の入らない個体もあるので、判別する決定打としては弱いです。確実に判別する場合は、子房を観察します。コニシキソウは子房全体に毛が生えており、ニシキソウは子房の表面がつるりとしています。すごく小さいのでルーペ必須です。
その他思うこと
コニシキソウやオオニシキソウはやたらとどこでも見るのに、ニシキソウは稀にしか見ません。コニシキソウは探さなくても見つかりますが、ニシキソウは探さないと見つかりません。ニシキソウは数が少ないのでしょうか? (たんに私の探し方が悪いだけなのかもしれませんが)。
さいごに
コニシキソウはどこでも見られるザッソウです。アリによって受粉される、目立たないけど特徴的な花をつけるなど、調べてみると面白いところがあります。それらの知識を踏まえたうえで観察すると、また違った魅力を発見できるかもしれません。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
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