散っていくソメイヨシノの後には遅咲きの桜が開花します。ある日馴染みの香木店の店主から「素晴らしい香りの桜がある、まるで天からその香りが降ってくるようだ、ソメイヨシノが終わった頃、あなたも一度その木の下を歩いてごらんなさい」と教えてもらい、「駿河台匂(するがだいにおい)という桜を訪ねてみることにしました。
「駿河台匂」は大島桜の一種で、その素晴らしい芳香にアロマの関係者の方々は必ず訪れると聞きました。元々は江戸屋敷駿河台の庭園に植えられていたことからこの名が付いたといいます。
JR御茶ノ水駅の聖橋口からニコライ堂の横を少し降りて行くと右手の路地にその可愛らしい並木道を見つけることができました。「ああ、ここなのだ」と踊りだしそうな気持ちで桜の木の下を歩いてみると、まだほんの僅かにしかほころんでいない可憐な花が私の目の前に顔を出してくれました。
一輪の桜をそっと手で支え、目を瞑り鼻に近づけて深く吸い込めば、清楚で可愛らしいその香りに一気にその場に同化してしまいそうな感覚になります。また、桜は昔から食用にも利用されたり漢方薬としても使われたりしてきました。まさに日本の宝です。
桜の香りを化学分析してみると、“ベンズアルデヒド”“フェネチルアルコール”“アニスアルデヒド”“クマリン”など、芳香に関係する成分が存在するといわれています。
切り落とされている若い枝が沢山置いてあるのを見つけて、通り掛かりの地元の方の了承を得て何本か持ち帰りました。鹿沼土に挿し木をして、私も駿河台匂を育ててみたいと思います。
この遅咲きの桜もそろそろ終わりに近づいていますが、私の春の一番の楽しみは、桜の花で豆乳ヨーグルトを作ること。そのお話は次回にお届けします。
(山口マユミ)
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